2018 Fiscal Year Annual Research Report
共集積コアシェル型カラムナー液晶を用いる革新的電場応答材料の開拓
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18J14400
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
矢野 慧一 東京大学, 工学系研究科, 特別研究員(DC2)
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Project Period (FY) |
2018-04-25 – 2020-03-31
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Keywords | 超分子重合 / 液晶媒体 / コアシェル構造 / カラムナー液晶 / 光応答性 / AND論理回路 |
Outline of Annual Research Achievements |
研究者自身が開拓してきたコアシェル型共集積カラムナー液晶は、ネマチック液晶媒体中での超分子重合によって得られ、円盤状分子の超分子ポリマーから成るコアを棒状液晶分子から成るシェルが取り囲んだ階層構造を有する。ここで円盤状分子と棒状分子を構造モジュールとみなし、光応答性の棒状液晶分子を液晶媒体としてモノマーの超分子重合を検討したところ、モル比1対6混合物がレクタンギュラー格子を有するコアシェル型共集積カラムナー相を発現した。このカラムナー相は155 °Cまで保たれ、等方性液体への相転移に伴い水素結合が解離した。さらにこのカラムナー相は直流電場に応答して平行配向するだけでなく、紫外光照射により数秒で液晶相から等方性液体へと相転移することを見出した。各種分光測定から、紫外光照射による棒状分子の異性化に伴ってモノマーの水素結合が解離することが明らかとなった。 さらに、本コアシェルカラムナー液晶の電場・光応答性に着目することで、液晶材料で初めての「書き換え可能なAND論理回路」を実現した。直流電場と紫外光をインプットとし、偏光顕微鏡(POM)観察下の明/暗視野をアウトプットとした。直流電場は、それ単体ではカラムを配向させない強度に設定したため、直流電場の印加のみではPOM画像は明視野のまま変化しない。一方、光照射のみの場合、照射中は等方性液体へと相転移するため暗視野を与えるが、照射を止めると直ちに初期状態と同様の明視野へと戻る。ここで光照射と合わせて直流電場を印加すると、照射を止めた後もPOM画像は暗視野を与えた。これは、光照射で生成したモノマーが共集積カラム構造を再構築する際に、直流電場の影響によりカラムが一軸配向したことを示している。直流電場と紫外光を同時にインプットした場合にのみ、アウトプットの暗視野状態が保持されることから、本系は「書き換え可能なAND論理回路」とみなせる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
平成29年度までに研究者自身が発見し開拓してきた「棒状分子から成る液晶媒体中での円盤状モノマーの超分子重合による、共集積コアシェル型カラムナー液晶の構築」について、さらなる研究発展を推進した。当該年度では、2種の異形分子を混合するだけで自発的に階層的集合体が構築することに着目し、光応答性の棒状分子を液晶溶媒としてモノマーを超分子重合させることにより、光にも電気にも応答する双応答性共集積コアシェル型カラムナー液晶の構築を実現した。この液晶材料は光照射に対して迅速に応答し、超分子ポリマーの解重合を伴ってカラムナー相から等方性液体へと可逆な相転移挙動を示した。さらにこの双応答性を生かして、電気信号と光信号に演算的に作動するAND論理回路を世界で初めて実現した。これらの研究成果は平成31年1月にScience誌に採択され、国内外のメディアで注目を集めた。当該年度において本研究者は3件の学会発表を行い、内1件では発表賞を受賞している。現在は本研究成果をさらに発展させ、ラジカル骨格を導入することで電場にも磁場にも応答する世界初のカラムナー液晶の開拓にも成功し、現在論文投稿中である。
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Strategy for Future Research Activity |
棒状分子を用いた共集積カラムナー液晶構築の基礎学理探究を目指す。種々の棒状液晶分子(水素結合性、イオン性、光応答性など)とそれに対応するBTA分子を合成した後、様々な比率で混合し、共集積構造の発現を示差走査熱量測定、偏光顕微鏡観察および放射光X線回折測定によって判断する。さらにこれらの知見を無機材料からなるコアシェル型ナノ粒子にも適用し、本来混ざり合わないものをナノスケールで複合化することにより、顕著な光学特性を有するナノ粒子の開発を行う。無機ナノ粒子の研究はミシガン大学のProf. Nicholas A. Kotovの下で研究に従事する。
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Research Products
(9 results)