2018 Fiscal Year Annual Research Report
Chemical Manipulation of Near-Infrared Responsiveness of Carbon Nanomaterials for Biomedical Applications
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18J14421
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Research Institution | Toyama Prefectural University |
Principal Investigator |
福田 亮介 富山県立大学, 工学研究科, 特別研究員(DC2)
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Project Period (FY) |
2018-04-25 – 2020-03-31
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Keywords | 単層カーボンナノチューブ / 近赤外光応答性 / 活性酸素種 / ポルフィリン誘導体 / apoA-I / 後眼部疾患治療用点眼剤 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、単層カーボンナノチューブの単一成分((6,5)-SWNT)の光機能を自在に操作することを目的としており、今年度は(6,5)-SWNTに修飾するための近赤外色素2種(チオフェン縮環ポルフィリン誘導体ZnPfThIC、ジアザポルフィリンPdDAP-COOH)を選定し、近赤外光照射による活性酸素種生成を調べた。まずZnPfThICを(6,5)-SWNT表面に物理吸着させ、さらに生体適合化のためにapoA-Iタンパク質を物理吸着させた。この複合体に近赤外光を照射したところ、ヒドロキシルラジカル(OH)生成活性が認められた。一方で、(6,5)-SWNTまたはZnPfThIC単独ではOHを光生成しなかった。これらの結果は、(6,5)-SWNTとZnPfThICとの複合化によって、近赤外光照射依存的なOH生成活性が増強する可能性を示唆する。次にジアザポルフィリンPdDAP-COOHのHeLa細胞に対する光毒性を調べたところ、光毒性が確認された。一重項酸素(1O2)消去剤存在下で同実験を行うと、生存率が大幅に上昇したことから、光毒性の主なメカニズムは1O2生成であることが明らかになった。 高密度リポタンパク質(HDL)を利用した後眼部疾患治療用の点眼剤開発にも取り組んだ。apoA-Iにショウジョウバエの持つ細胞膜透過性ペプチドPenetratinを融合した変異体をリン脂質1,2-distearoyl-sn-glycero-3-phosphocholineと混合し、HDL(HDL/PEN)を作製した。加齢黄斑変性のモデルマウスを用いた前臨床試験において、HDL/PENは有意な血管新生阻害効果を示し、抗血管新生薬の搭載により、その効果は増強された。現在、HDL/PEN点眼剤の実用化に向けて、凍結乾燥保存方法の開発に着手している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
(6,5)-SWNTの光機能を向上させるための修飾分子としてチオフェン縮環ポルフィリン誘導体ZnPfThICを見出し、近赤外光照射による活性酸素種生成を実証した。さらにその活性酸素種生成が複合化によって発現する機能であることも明らかとした。この結果により、近赤外光捕集分子を(6,5)-SWNTに吸着させることで、(6,5)-SWNTへの効率的な電子供給を達成するという材料設計指針の妥当性が示された。また、apoA-Iはアミロイドベータペプチドに対して結合親和性を示すため、今後行う予定であるアミロイドベータペプチド凝集体光分解実験に用いる材料として有望である。そのapoA-Iが、難水分散性の(6,5)-SWNTおよびZnPfThICを生理的条件で分散化させるという知見を得たことは、これらの光応答性材料の生物医学応用の実現可能性を高めたと言える。さらに、apoA-Iとリン脂質から構成されるHDL/PENナノキャリアが、後眼部疾患を標的とした点眼剤として応用可能であることを示した。興味深いことに、HDL/PENは他のキャリアとは異なり、キャリア自体が血管新生阻害効果を示すという結果も見出している。以上より、研究計画がおおむね順調に進展していると言える。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、(6,5)-SWNTとチオフェン縮環ポルフィリン誘導体ZnPfThICの複合体の高効率な活性酸素種生成のメカニズムを明らかにするために、ZnPfThICから(6,5)-SWNTへの電子移動を調べる。電子移動の有無は(6,5)-SWNTの近赤外蛍光測定と過渡吸収測定で判断する。また、一重項酸素生成が確認されたジアザポルフィリンPdDAP-COOHもZnPfThICと同様の方法で(6,5)-SWNTに物理吸着させ、近赤外光照射依存的な活性酸素種生成を調べる。後眼部疾患を標的とした点眼剤としてのHDL/PENについては、現在取り組んでいる、スクロースを保護剤として用いる凍結乾燥保存法の確立を最優先課題とする。その後、共同研究により、加齢黄斑変性や網膜色素変性の治療候補薬を搭載させて、疾患モデル動物に点眼投与し、治療効果の評価を行う。
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