2018 Fiscal Year Annual Research Report
ロボットが人間から援助を引き出す影響過程:人間との有益な関係構築に向けた検討
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18J14433
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
谷辺 哲史 東京大学, 人文社会系研究科, 特別研究員(DC2)
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Project Period (FY) |
2018-04-25 – 2020-03-31
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Keywords | ヒューマン・ロボット・インタラクション / 心の知覚 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度の研究では、コミュニケーション・ロボットの実用化がすでに現実のものとなっている介護分野を題材とし、ロボットに対する認知と利用意図等の態度との関連を検討した。 1つ目の調査では、調査回答者が介護者として自身の家族等の介護をする際にコミュニケーション・ロボットを利用するという場面を想定し、ロボットに「意識がある」「生物的」といった印象(生物らしさの知覚)が利用意図に与える影響を検討した。その結果、高齢者介護は家族が中心になって行うべきだという態度(家族介護意識)が低い場合には、ロボットが生物らしいと知覚するほど利用意図が高くなった。しかし、家族介護意識が高い場合には、ロボットが生物らしいと知覚するほど利用意図が低くなる傾向が見られた。この調査結果は日本社会心理学会大会にて報告された。 2つ目の調査では、心の知覚が主体性と経験性の2因子からなるという先行研究の知見を踏まえ、それぞれの次元での心の知覚がロボットの利用意図に与える影響を検討した。その結果、家族介護意識が低い場合には、ロボットの主体性を高く知覚するほど利用意図が高くなった。主体性とは自律的な行為を生み出す心の働きであり、介護という場面で適切に仕事をこなしてくれるという期待につながったと考えられる。一方、家族介護意識が高い場合には、ロボットの経験性を高く知覚するほど利用意図が高くなった。経験性を備えているという知覚はロボットの機械的な印象を和らげ、ロボットを利用することへの抵抗感が軽減されたと解釈できる。この調査結果は米国で開催されたSociety for Personality Social Psychology Annual Conventionにて報告された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度はコミュニケーション・ロボットに対する認知と利用意図の関連に焦点を当てて調査を実施し、おおむね仮説に一致する結果が得られている。これらの調査結果のうち一部は国内外の学会で発表され、学会での議論も踏まえて論文投稿に向け準備中である。その他に実施した調査も翌年度中に学会発表・投稿論文として公表される見込みである。
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Strategy for Future Research Activity |
今後はロボットの実機を用いた行動実験を実施し、自律ロボットに対する認知・行動をより妥当性の高い手法を用いて検証する予定である。 また、自動運転や医療等の幅広い分野における人工知能の活用について社会調査を実施し、人工知能の社会的受容を促進する要因や、技術の社会実装に伴う倫理的問題への人々の反応を検討する予定である。
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Research Products
(2 results)