2018 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
18J14529
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
村上 光 京都大学, 工学研究科, 特別研究員(DC2)
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Project Period (FY) |
2018-04-25 – 2020-03-31
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Keywords | 脂肪酸不飽和化酵素 / 細胞内温度 / 蛍光性ポリマー温度センサー / ミトコンドリア / 温度適応 / 温度感知 |
Outline of Annual Research Achievements |
環境温度の変化は細胞機能に強く影響を与える。従って、細胞は恒常性を維持するために温度変化を感知し適応する必要があるが、その詳細な分子機構は不明である。本研究員はこれまでに、生体膜の流動性の調節により温度適応に寄与するショウジョウバエの脂肪酸不飽和化酵素DESAT1が膜流動性の変化に応答したタンパク質分解制御を受けることを見出した(Murakami et al. (2017) J Biol Chem 292, 19976-19986)。そこで本研究では、DESAT1が細胞機能において果たす役割について解析を行うことにより、細胞の温度感知及び適応機構の解明を目指した。 当該年度の研究においては、共焦点レーザー走査型顕微鏡を用いた細胞内小器官局在型EGFPの観察を行い、DESAT1の特異的阻害剤によりミトコンドリアが断片化することを見出した。また、蛍光性小分子プローブを駆使し、DESAT1阻害剤によりミトコンドリア膜電位の低下やミトコンドリアをはじめとする細胞内Ca2+ストアの異常が惹起されることを明らかにした。さらに、細胞膜透過型の蛍光性ポリマー温度センサー(Hayashi et al. (2015) PLoS ONE 10, e0117677)と蛍光寿命顕微鏡を用いた細胞内温度計測法をショウジョウバエ培養細胞S2において確立し、DESAT1阻害剤により通常培養温度(25℃)における細胞内温度が顕著に低下することを見出した。 これらの結果から、DESAT1がミトコンドリア等の熱産生を行う細胞内小器官の機能制御を介して細胞内温度を制御することが示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2018年度の研究により、DESAT1による膜脂質の制御がミトコンドリアの形態や機能の制御に関与すること、さらに細胞内Ca2+シグナリングにも影響を与えていることを見出した。また、ショウジョウバエ培養細胞における蛍光性ポリマー温度センサーによる細胞内温度計測法を確立し、DESAT1が細胞内温度の制御に関与することを明らかにした。本細胞内温度計測法は、2019年度に計画している研究にも活用できる。これらの研究内容成果については、第91回日本生化学会大会(京都)にて発表した。以上の進捗状況から、当初の計画を基に本研究が概ね順調に進展したと判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
・DESAT1がミトコンドリア機能を制御する分子機構を解析するため、細胞外フラックスアナライザーを用いた酸素消費速度(OCR)測定を行う。さらに、ミトコンドリア呼吸鎖に関して生化学的手法により複合体の形成状態の解析並びに酵素活性の測定を行う。また、分析化学的手法によりミトコンドリアの単離及びミトコンドリアリン脂質の脂肪酸組成の解析を行う。 ・蛍光性ポリマー温度センサーによりDesat1遺伝子破壊細胞の細胞内温度を計測する。また、蛍光タンパク質温度センサーにより細胞内小器官の温度を直接評価する手法(Kiyonaka et al. (2013) Nat methods 10, 1232-1238)を確立し、DESAT1による細胞内温度制御の作用点を明らかにする。 ・DESAT1が制御する細胞内Ca2+シグナリングと細胞内温度との関連を解析する。さらに、DESAT1による細胞内温度の制御機構と低温環境への適応機構との関連を解析する。
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Research Products
(2 results)