2018 Fiscal Year Annual Research Report
Exploration of Interior Structure and Formation Process of super-Earths with Cloud Microphysics
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18J14557
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Research Institution | Tokyo Institute of Technology |
Principal Investigator |
大野 和正 東京工業大学, 理学院, 特別研究員(DC2)
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Project Period (FY) |
2018-04-25 – 2020-03-31
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Keywords | 系外惑星 / スーパーアース / 大気 / 雲 / 大気透過光スペクトル観測 |
Outline of Annual Research Achievements |
近年の宇宙望遠鏡による系外惑星大気観測により、多くのスーパーアースは大気高層が雲に覆われていることが明らかとなった。このような天体は、大気観測から組成を直接制約することが困難である。本研究の目的は、雲の空間および光学構造が大気組成に依存することに着目し、高層雲の形成機構を理解することでスーパーアースの大気組成を制約することである。また、推定された大気組成から、スーパーアースの形成機構を明らかにすることを目指す。 今年度は、複数のスーパーアースに対して雲形成計算を行った結果をまとめ、The Astrophysical Journalに掲載された。本論文では、雲の鉛直構造を支配する雲構成粒子(雲粒)サイズを詳細に調べ、数値的および解析的に雲粒サイズの下限値を求めた。従来、系外惑星大気における雲粒サイズは明らかではなく、雲の鉛直構造に大きな不定性が存在していた。本結果は、雲粒サイズの下限値を決定することで、雲が到達可能な高度を推定することを可能とした。 上記の結果に加えて、観測されている大気透過光スペクトルを説明できる高度まで雲が到達できない天体(GJ1214b)が存在することを発見した。この問題に対して、雲粒が雪のような多孔質粒子となることで高層雲が形成されるという仮説を検証した。雲粒の空隙率がどのように変化するかを計算し、雲粒は成長に伴って密度が大きく減少することで大気高層まで到達するという高層雲形成機構を発見した。また、多孔質粒子の光学特性から理論大気透過光スペクトルを計算し、雲の存在が示唆されるスーパーアースの観測スペクトルは、大気の重元素量が非常に高い場合にのみ形成されうることを明らかにした。本結果は、国際学会で発表し、現在論文にまとめている最中である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
今年度の研究計画として当初予定していた、様々な大気の炭素と酸素比に対する雲の光学特性の調査は、雲粒子の複素屈折率データの欠落から遅れている。一方、今年度の後半に予定していた大気透過光スペクトルの理論モデル構築は、当初の想定より早く完成した。また、次年度に予定していたスーパーアースの大気重元素量の制約に関して、多孔質粒子の光学特性に由来する観測スペクトルの特徴に着目することで、今年度中に結果を得ることができた。
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Strategy for Future Research Activity |
雲の存在が示唆されるスーパーアースは、重元素量に富んだ大気を持つ可能性が高いことが前年度の研究から分かった。今後は、当初予定していた大気形成モデルを構築することで、大気重元素量とスーパーアースの降着物質の性質(サイズ・組成)を結びつける研究に取り組む。重元素大気が形成される条件を明らかにすることで、スーパーアースの形成機構に制約を与えることを目指す。
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