2018 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
18J14649
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Research Institution | Yokohama City University |
Principal Investigator |
圓 敦貴 横浜市立大学, 生命ナノシステム科学研究科, 特別研究員(DC2)
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Project Period (FY) |
2018-04-25 – 2020-03-31
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Keywords | 細胞老化 |
Outline of Annual Research Achievements |
細胞老化は、動物組織を構成する体細胞が種々のストレスに曝された際に、分裂能力を不可逆的に喪失する現象である。近年の研究より、細胞老化は生物個体の老化の一因となることが示され、大きな関心を集めている。細胞老化においてヘテロクロマチンの変化(消失や再構成)とタンパク質の過剰な蓄積は普遍的に観察される。これまでの研究で、細胞老化で変化する核膜タンパク質を探索し、ヘテロクロマチン形成に重要なlamin B receptor(LBR)が、細胞種(正常細胞、がん細胞)や誘導法に依存せずに変化する可能性を示した。本研究は、①細胞老化におけるLBRの発現低下機構の解明、②LBRの発現変化が細胞老化に及ぼす影響の解明を目標にした。 ①プロテアソーム阻害剤 MG132による細胞老化において、タンパク質の異常な蓄積とそれに続くオートファジーの活性化が、LBRの分解に関与することを明らかにした。オートファジーによる分解に抵抗性を示す変異型LBRを作製し、変異型LBRの強制発現は細胞老化を効率的に抑制することを見出した。細胞老化の抑制は、細胞のがん化に不可欠な過程であり、LBRの変異ががん化に寄与する可能性が示唆された。 ②LBRの発現上昇は、細胞老化におけるヘテロクロマチンの再構成を部分的に抑制した。また、RNAi法を用いてLBRの発現低下を誘導すると、細胞老化で見られるヘテロクロマチンの再構成が観察された。老化細胞が発現する特徴的な遺伝子の中には加齢性疾患の発症・進行に寄与するものが含まれる。ヘテロクロマチンの再構成は、大規模な遺伝子発現の変化を引き起こし、老化関連遺伝子の活性化に寄与する可能性が高い。本研究から、LBRの機能が、細胞老化のみならず、がん化や個体老化においても重要な役割を果たす可能性が示された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究は、①細胞老化におけるLBRの発現低下機構の解明、②LBRの発現変化が細胞老化に及ぼす影響の解明を目標にしている。①については予定通り達成した。②については、細胞老化で見られるヘテロクロマチン異常やプロテアソーム異常にLBRが関与するかを明らかにする予定であり、ヘテロクロマチン異常への関与は示すことが出来た。現在、プロテアソーム異常への関与を確認するため、引き続き実験を進めている。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、LBRの発現変化が細胞老化に及ぼす影響についてさらなる解析を行う。現在、RNAi法によりLBRの発現低下を誘導した細胞のRNAを回収し、マイクロアレイ解析を行っている。プロテアソームサブユニットの発現変化を網羅的に解析する予定である。また、LBRの発現変化がプロテアソームの活性に影響を与えるかについても調べる予定である。
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Research Products
(5 results)