2018 Fiscal Year Annual Research Report
全駆動マルチロータの構造・制御系の統合最適設計フレームワークの確立
Project/Area Number |
18J14658
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Research Institution | Tokyo Institute of Technology |
Principal Investigator |
田所 祐一 東京工業大学, 工学院, 特別研究員(DC2)
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Project Period (FY) |
2018-04-25 – 2020-03-31
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Keywords | UAV / 最適制御 / 最適設計 |
Outline of Annual Research Achievements |
一般的に「ドローン」として知られるマルチロータは,通常推力を上向きにしか出力できないことから,機体の傾きを伴わない水平方向への加速や押し付け力の印加が原理的に不可能であり,物体との接触を伴う空中作業や位置・姿勢の高精度な制御が求められる実用例において問題がある.これを解決する方策として,推力を生み出すロータを傾けて取り付けた全駆動マルチロータという新しいタイプの構造が本研究の対象である.全駆動マルチロータは,機体の力を出力しやすい方向とその程度がロータの配置や傾き角などの構造パラメータによって変化する.このことに着目し,用途に基づく制御目標を評価関数として,構造パラメータと制御則を同時に最適化する手法に関して研究を進めている. 本研究の主たる貢献として,ある最適制御問題の解析解としての価値関数に基づく構造設計手法を提案した.まず解析的な手法によって最適制御問題を解くことで,評価関数の最小値を表す価値関数が初期状態に依存する解析的な関数として得られた.この価値関数を構造パラメータの関数として再解釈することによって,最適制御入力を与えたときの評価関数の値をさらに小さくする構造パラメータを数値最適化によって求めることができることを示した.結果として,一般的に用いられる二次形式の時間積分に基づく評価関数を用いたとき,機体の全駆動性の指標である動的可操作性を最大化することによって最適な構造が得られるという結論を得た.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
マルチロータの機体の構造に固有である「得意な運動」を表わす加速度の方向特性を,楕円体を用いて評価する手法を示した.また,立体的なロータ配置をもつすべてのマルチロータが剛体力学的に等価な平面配置に変形できることを示し,従来の平面配置のみに対する解析を立体的な構造にも適用可能となるように拡張した. 申請者は,この構造固有の「得意な運動」を制御目標に応じて設計することが,効率的なタスクの遂行につながると考えた.この着想から,機体の「得意な運動」を活用する最適制御則と,その最適制御問題の解である価値関数を最小化する機体構造とを,同時に最適化によって求める手法を提案した.この結果によって,制御目標を評価関数最小化の意味で最適に達成するロータ配置・傾き角を,最適制御入力とともに求めることが可能となった. これらの成果は,2件の国際会議論文にて発表した.
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Strategy for Future Research Activity |
今後の研究方針は,得られた成果の実機検証と,より一般のメカニズムや制御目標に対応するための数値的手法の提案である. 必要な実験機と実験環境のほとんどは構築が完了している.当初実施を検討していた物体のマニピュレーション実験は,扱う機体のロータどうしの空気力学的干渉や地面効果による外乱力が大きいことから,実施が難しいことが考えられる.代替案として,壁面の検査を模擬し,壁面に対する押付力を維持したまま移動を行うタスクを,従来のマルチロータと本研究で対象とする全駆動マルチロータとで比較する実験を実施する可能性が高い. また,本研究でこれまでに提案した手法は,マルチロータ特有の数学的性質を利用して求めた最適制御問題の解析解を前提としており,マルチロータ以外のメカニズムへの知見の活用が容易ではない.数値的な最適制御手法や,強化学習の分野で盛んに研究されている価値関数の近似手法などを活用して,より一般のメカニズムや評価関数に対して本手法に基づいた最適制御・最適設計を適用できるように研究を遂行したい.
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Research Products
(7 results)