2018 Fiscal Year Annual Research Report
拍動する細胞にも追従可能な伸縮性センサに関する研究
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18J14664
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
奥谷 智裕 東京大学, 工学系研究科, 特別研究員(DC2)
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Project Period (FY) |
2018-04-25 – 2020-03-31
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Keywords | メッシュエレクトロニクス |
Outline of Annual Research Achievements |
これまでに、柔らかい伸縮性センサの開発に関して、主に取り組んだ。柔らかい伸縮性センサの作製に向け、構造的に伸縮性を有する、メッシュ構造のセンサの開発に取り組んだ。まずメッシュセンサを駆動する際に重要な、メッシュ配線に焦点を当てた。メッシュセンサを駆動するにあたって、配線の抵抗値が高いという問題があった。これは、メッシュを構成するナノファイバー同士のコンタクトが良くないため、作製された電極において、導電のパスがないことに起因していた。そこで、このコンタクトを向上させるために、熱圧着プロセスの導入を考案した。このプロセスの導入により、それぞれのファイバー同士がつながった構造のメッシュを作製することができ、導入前では測定できなかった抵抗値を、フィルム配線の抵抗値の5倍程度の値まで下げることに成功した。また開発したセンサの伸縮時の硬さに関して、評価を行った。まず、硬い材料のポリビニルアルコール(PVA)と柔らかい材料のポリウレタン(PU)に関して、メッシュ基板自体の評価を行った。メッシュ構造にすることで、基板の柔らかさはヤング率計算で100 kPaよりも小さくなった。これは従来のフィルム構造でのMPaオーダーのヤング率に比べて、極めて小さかった。またこのメッシュ基板に、金を蒸着することで、70%以上の透明率を有しつつも、100 kPa程度のヤング率を持つメッシュセンサの開発に成功した。このメッシュセンサは透明かつ柔らかいため、細胞計測に適していると考えられる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
ポリビニルアルコール(PVA)を用いて、メッシュ電極を作製し、導電性の向上に関して研究を行った。具体的には、エレクトロスピニングによりファイバーメッシュを作製し、このPVAメッシュに金を蒸着することで電極を作製した。さらに、金蒸着前に熱圧着を行うことでメッシュ同士のコンタクトを良くし、導電率の向上を図った。熱圧着プロセスを加えないと、メッシュ同士のコンタクトがよくないため、抵抗が測れないくらい高かった。一方で、PVAが完全に溶けない200℃で、5分圧着することで、ポリマーメッシュの幅が487nmから643nmに増加し、抵抗は50Ω程度まで低下した。 次にファイバーに熱圧着を施した後、金を蒸着したメッシュ電極の硬さの評価をメッシュの密度とファイバーの材料の観点から行った。硬いポリマー材料としてPVAを、柔らかい材料としてポリウレタン(PU)を選択し、メッシュの密度はスピニングの時間を2-20分で変えることで条件を振った。作製したメッシュ電極を透明性、導電率、引張力など複数の観点から評価した。特に引張に関しては、それぞれの材料のフィルムでの評価およびヤング率の観点から比較した。メッシュの密度が薄いと熱圧着によりメッシュが壊れる現象が見られた。また、PVAを用いたほうが、PUよりもメッシュの密度を下げることができた。導電率はどの条件でも40Ωを下回り、電極として使うには十分であった。同じ密度で比較した際、PU上電極の方が柔らかいが、可能な密度を考慮すると同程度であった。フィルム、メッシュ共に2%伸長時でのヤング率に関して測定したところ、PUはPVAよりもヤング率が低かった。しかし、金電極を蒸着したものはその差がなくなりつつあることから金電極部分で柔らかさが決まっていると考えられる。 このようにメッシュ密度を薄くすることで、透明性と柔らかさを同時に満たすメッシュ配線の作製に成功した。
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Strategy for Future Research Activity |
今年度は前年度で得られた、硬いポリマーを使った際に柔らかいポリマーよりもメッシュの密度を下げてデバイスを作製できる、というアイデアを活かし、形状記憶ポリマーによるファイバーメッシュデバイスをまず提案する。形状記憶ポリマーにはポリウレタン系の材料を用いる。この材料の特色としては、室温では材料が硬いが、材料のガラス転移温度を超える37℃の細胞培養環境では、非常に柔らかくなることがあげられる。つまり、室温で行われる作製プロセス段階では、材料が硬いため扱いやすく、デバイス作製としてメッシュ密度の低いものを作るのが可能であり、さらに実際にデバイスを駆動させる細胞培養環境ではデバイスが柔らかくなることで細胞の柔らかさに追従することができる。よって、本研究が目指す柔軟なメッシュセンサに適していると考えられる。この形状記憶ポリマーを用いたメッシュデバイスの最適化をまず行う。材料溶液の濃度や溶媒などのパラメータを調べることで、最適なファイバーを見つける。この最適化が終わり際、このメッシュデバイス電極形成前後における、室温、細胞培養環境(37℃)での伸縮試験を行い、デバイスの基礎特性を測定する。37℃での伸縮測定の環境は弊研究室ではまだ立ち上がっていないので、まず実験系の立ち上げを行う。この基礎特性の測定の後、実際に心筋細胞を培養し、電位の測定を行っていく。
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Research Products
(5 results)