2018 Fiscal Year Annual Research Report
遺伝子改変マウスを用いた双極性障害患者デノボ変異の機能解析
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18J14675
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
中村 匠 東京大学, 総合文化研究科, 特別研究員(DC2)
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Project Period (FY) |
2018-04-25 – 2020-03-31
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Keywords | 双極性障害 / 自閉症 / 統合失調症 / デノボ変異 / CRISPR/Cas9 |
Outline of Annual Research Achievements |
CRISPR/Cas9により双極性障害患者のKMT2C変異を有するエクソンを切断した全身性Kmt2cヘテロノックアウトマウス(Kmt2c-KOマウス)を作製した。Kmt2c-KOマウスは、自閉症患者でたびたび観察される脳重の増加を呈していた。また、行動レベルでも自閉症様行動を見いだしている。ケージ内の4つのコーナーにそれぞれ飲水場を設置し、水を飲めるコーナーを一か所に固定し、毎日飲めるコーナーを対角線上に入れ替える実験を行った。この対角線を4日ごとに変えると、Kmt2c-KOマウスはルール変更に柔軟に対応できず、前日飲むことが出来たコーナーに固執することを見いだし、Kmt2c-KOマウスは、自閉症患者の三大主徴のひとつである固執行動を示すことを確認した。以上の結果から、双極性障害患者変異を全身に再現したKmt2c-KOマウスは、自閉症様表現型の一部を示すことを、すでに見いだしている。 Macf1遺伝子改変マウスについては、マウスの行動を半自動的に測定可能なインテリケージタスクを用いた解析を行った。二つの飲水ボトルのうち、片方をサッカリン水に変え嗜好性を与えた。サッカリン水を飲めるまでの時間を延ばすと、通常のマウスはサッカリン水ではなく通常の水を飲むように変わるが、Macf1マウスは、遅延時間が延びてもサッカリン水にこだわる、すなわち、報酬にこだわる表現型を示した。また、注意力低下も確認しており、双極性障害様行動を見いだした。Ehd1マウスについては、輪回し行動解析を行ったところ、明期でも有意に活動量が増加していることを見いだした。睡眠の低下もしくは過活動が示唆され、双極性障害患者様行動を示すことを確認した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成30年度は、申請通りの計画でおおむね進行した。各種行動テストは終了し、作製した遺伝子改変マウスにおいて、一部の異常行動を確認した。特に、Kmt2c遺伝子改変マウスについては、双極性障害様行動ではなく、自閉症様行動を示すことを見いだし、Kmt2c遺伝子の解析について、新たな仮説が生まれ、大きく進展したと考える。Macf1、Ehd1遺伝子改変マウスについては、双極性障害患者で見られる異常を一部見いだしており、デノボ変異解析の有用性を示した結果といえる。これら異常についての分子・細胞レベルでのメカニズムを調べるために、2年目に実行する予定の解析をすでにスタートしており、進捗状況はおおむね順調であると考える。
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Strategy for Future Research Activity |
Ehd1変異マウスについては、既に培養細胞株実験により見いだしている神経突起伸長やエンドサイトーシス機能の異常がマウスでも確認できるのかを、神経初代培養系を用いて検討する。Macf1については、双極性障害様行動を示した原因を探るため、神経特異的バリアント発現部位の同定を行い、更なる知見を得る。Kmt2cマウスについては、脳の形態について更なる解析を進めていく。
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Research Products
(6 results)