2018 Fiscal Year Annual Research Report
複合アニオン配位をとる層状オキシカルコゲナイドの新奇物性開拓
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18J14770
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
松本 勇輝 京都大学, 工学研究科, 特別研究員(DC2)
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Project Period (FY) |
2018-04-25 – 2020-03-31
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Keywords | オキシカルコゲナイド / 高圧合成法 / 複合アニオン / 層状構造 / インターグロース構造 / 固体化学 / 無機化学 / 磁性 |
Outline of Annual Research Achievements |
新規複合アニオン化合物の開拓を行い、得られた四つの新規物質についてまとめた論文が、Angew. Chem. Int. Ed.誌へ掲載された。 本論文では、世界で初めてS = 1の平面四配位のシートを実現したA2NiO2Ag2Se2 (A = Sr, Ba)について報告すると同時に、高圧合成法の有用性を圧縮率の観点から議論した。本研究で得られた一連のオキシカルコゲナイドは、酸化物層とカルコゲナイド層とが交互に積層したインターグロース構造をとる。酸化物層は平面四配位のシートから構成されるが、平面四配位において過去最大のM-O結合長(M = Mn, Ni, Cu)を有し、Bond Valence Sumの値は、形式価数に対して異常に小さい。一方で、カルコゲナイド層のBond Valence Sumの値は形式価数に近い値を取る。これは、相対的に大きなカルコゲナイド層から小さい酸化物層へ張力が掛かっており、平面四配位が引き伸ばされていることを意味しており、こうした配位環境によってdx2-y2軌道のエネルギーが低下し、平面四配位をとる高スピン状態のNi2+(S = 1)が実現された。インターグロース構造における圧縮率の違いに着眼し、高圧合成法における新規物質開拓の新たな可能性・有用性を提示したのはこの論文が初めてである。 研究結果をまとめると同時に、新規層状オキシカルコゲナイドの開拓を続けており、今年度は四つの新規物質の合成に成功している。その内の一つは、詳細な構造解析の結果、類似組成の従来の物質とは異なる空間群をもち、今までにない配位環境・局所構造を有することを明らかにした。また、国内での四つの発表に加え、海外(スペイン)でも口頭・ポスター発表の二つをこなした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
上述のように、高圧合成法を用いることで、複数の新規層状オキシカルコゲナイドの合成に成功し、新奇物性の開拓に繋げたため。A2NiO2Ag2Se2 (A = Sr, Ba)においては、S = 1の平面四配位のシートを実現することに成功し、研究成果はAngew. Chem. Int. Ed.誌へ掲載された。
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Strategy for Future Research Activity |
引き続き、高圧合成法を用いて新規複合アニオン化合物の探索を推し進め、物性(磁性や電気伝導性など)と結晶構造との相関を明らかにする。特に、圧縮率の違いを利用した、高圧合成法による、インターグロース構造を有する新規物質の開拓という概念を拡張していく方針で研究を進める。従来の物質、単純な酸化物やカルコゲナイドでは得られない物性を、複合アニオン化することで見出し、基礎的な知見を集める。粉末放射光X線回折測定や中性子線回折測定、磁化率測定、メスバウアー測定、理論計算との比較などによって実験結果を考察し、適宜論文にまとめていく。
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