2018 Fiscal Year Annual Research Report
被覆型接合分子を用いた有機-無機ハイブリットデバイスの創製
Project/Area Number |
18J14986
|
Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
金子 俊一 東京大学, 総合文化研究科, 特別研究員(DC2)
|
Project Period (FY) |
2018-04-25 – 2020-03-31
|
Keywords | 光化学反応 / 白金錯体 |
Outline of Annual Research Achievements |
平成30年度の研究目的は、被覆型接合分子を精密に設計し、合成後は完全メチル化αシクロデキストリンの被覆により実現される特異的な光吸収・発光特性を分子レベルで評価することであった。まず、被覆型接合分子の前駆体候補として合成した被覆型白金アセチリド錯体の光物性を調査した。その中で白金アセチリド錯体の分解反応が光照射によって加速的に進行する極めて興味深い現象を発見した。続いてDFT計算及びTD-DFT計算によって基底状態と励起状態における白金アセチリド錯体の構造と電子状態を調査した。その結果、白金アセチリド錯体は光照射によって過渡的に構造変化を起こし、新たなフロンティア軌道を生成することで、特異的な反応性を得ていることが判明した。この光によって誘起される過渡的な構造変化の機構はこれまでに報告されていない現象である。それ故に、本研究は光化学と錯体化学の境界領域において新しい概念を提唱するものである。今後は、当初の目的であった被覆型有機-無機ハイブリッドデバイスの開発に向けて、この白金アセチリド錯体を被覆型接合分子化し、基板に接合させ、光照射による構造変化に伴う電流値変化やその他の特異的な物性の変化が起こるか確認する。この検討により、モノマー単位で解明した白金アセチリド錯体に関する現象を色素増感太陽電池やアップコンバージョン素子といった有機-無機ハイブリッドデバイスへ応用可能か調査する予定である。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
平成30年度の研究目的は被覆型接合分子を精密に設計し、合成後は完全メチル化αシクロデキストリンの被覆により実現される特異的な光吸収・発光特性を分子レベルで評価することであった。現在、それらは概ね達成できている。またその中で白金アセチリド錯体の分解反応が光照射によって加速的に進行する極めて興味深い現象を発見した。DFT計算を用いることで、そのメカニズムの解明にも成功した。特にこの現象は光化学と錯体化学の境界領域において新しい概念を提唱するものであることから、当初の計画以上に研究が進展していると考えられる。
|
Strategy for Future Research Activity |
昨年度発見した白金アセチリド錯体の光と塩酸による加速的分解反応に関する研究を実験と計算の両方を用いて更に進める予定である。本現象はπ共役平面とリン配位子の二面角の回転が鍵であったため、その回転を抑制するようなリンカーを白金アセチリド錯体に付け、光照射下での分解度をリンカーの無いものと比較する。またDFTを用いた計算によって、リンカーの長さが回転に立体障害としてどれほど影響しているか調査する。 さらにこの反応においてはcis体ではなくtrans体が関与していることを示すため、被覆型のtrans-白金アセチリド錯体の分解反応をモノマー単位で観察する。被覆に用いるのは完全メチル化αシクロデキストリンであり、これらが白金周辺を高い被覆率で覆っている。trans体からcis体への異性化は、完全メチル化αシクロデキストリン同士の立体反発によって阻害されると考えられ、cis体から分解が進む可能性を排除できると考えている。 また更なる検討として、上記の反応が塩酸のプロトンが駆動力ではなく、白金の求電子性に由来するものであることを示す。そのために、塩酸と比較して求核性が低い銅アセチリド錯体を求核剤として用いて光照射下での配位子交換反応を行う。光照射条件においてのみπ共役配位子が加速的に交換していれば、光照射による白金の求電子性の向上が証明できると考えている。 以上の現象を明らかにした後に、この白金アセチリド錯体を被覆型接合分子化し、基板に接合させ、光照射による構造変化に伴う電流値変化やその他の特異的な物性の変化が起こるか確認する。この検討により、モノマー単位で解明した白金アセチリド錯体に関する現象を色素増感太陽電池やアップコンバージョン素子といった有機-無機ハイブリッドデバイスへ応用可能か調査する。
|