2018 Fiscal Year Annual Research Report
力学刺激による超分子構造の制御を基軸とした革新的メカノクロミック材料の創成
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18J14997
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
稲森 大貴 東京大学, 総合文化研究科, 特別研究員(DC2)
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Project Period (FY) |
2018-04-25 – 2020-03-31
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Keywords | 超分子 / ロタキサン / クロミック分子 |
Outline of Annual Research Achievements |
私は、非破壊過程で色変化するようなメカノクロミック分子の開発を目指し、研究を行った。今年度は、様々な超分子の中でも、環状分子と軸状分子から構成される超分子であるロタキサン分子に着目した。このロタキサン分子は外力を加えると、環状分子が軸状分子上をスライドし外力を緩和することが知られており、ロタキサンが架橋したネットワークポリマーは、しなやかかつ強靭な材料への応用が期待されている。私は、外力でロタキサンの環状分子がスライドし、環状分子に保護されていた発光部位がアクセプター分子と衝突することにより、分光特性へと反映するロタキサン型メカノクロミック分子を考案し、合成を試みた。このロタキサンに対し3段階の反応でポリマー鎖を修飾することで目的のメカノクロミック分子を得た。ポリマー鎖を修飾させたメカノクロミック分子に対して超音波照射を行うと、ポリマー鎖に張力が発生することで、メカノクロミック応答を示すことが知られているが、合成したロタキサン型メカノクロミック分子に対しても超音波照射でメカノクロミック応答に対する調査を行った。その結果、超音波照射により、可逆的な溶液の色変化が観測された。これは、ポリマー鎖に生じた張力が、ロタキサンの環状分子を移動させることで、環状分子に保護されていた発光ドナー部位のピレンが曝露し、アクセプター分子と衝突することで、発光特性の変化、すなわちメカノクロミック応答性が発現したと考えられる。現在は、このメカノクロミック分子の定量的な調査を行うとともに、色変化等の改良を加えており、今後は、本メカノクロミック分子をゲル材料に組み込んだメカノクロミック材料へと展開する予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
平成30年度の研究目的は、力学刺激に応答して構造変化をする超分子を精密に設計・合成し、力学刺激による発光特性の変化を評価することであった。まず、種々の超分子の設計・合成を行った結果。目的の化合物を得ることに成功し、また、合成したロタキサンの発光特性の変化を調査した結果、環状分子と軸分子から構成されるロタキサン超分子が、力学刺激によって可逆な発光特性の変化と考えられる現象が確認された。また、この研究の過程で、熱で色変化するサーモクロミック分子の発見にも繋がり、期待以上の研究の進展があったと言える。
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Strategy for Future Research Activity |
今後の研究方針としては、発現したロタキサンのメカノクロミック特性の詳細な調査を行う予定である。定量的な超音波照射発光スペクトル測定を行うことで、メカノクロミック特性がどれほど発現するのか調査し、現在は青紫色からわずかに白みがかる程度であるが、アクセプター分子の変更により、大きな色変化をする系を創出することを試みる予定である。 また、本メカノクロミック分子をゲル材料に組み込んだメカノクロミック材料へと展開する予定である。 更に、研究の過程で、熱で色変化するサーモクロミック分子の発見があったので、定量的な調査を行い、ロタキサンを用いた熱センサへの研究を展開する予定である。
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Research Products
(1 results)