2018 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
18J15130
|
Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
辻 幸樹 慶應義塾大学, 社会学研究科, 特別研究員(DC2)
|
Project Period (FY) |
2018-04-25 – 2020-03-31
|
Keywords | 認知的制御 / 反応抑制 / 選好 / 消費者行動 / 購買行動 / 脳波 / 事象関連電位 |
Outline of Annual Research Achievements |
人間は日々様々な選好に基づく選択意思決定を行なっている。その中でも、日常場面での選択行動の典型である購買行動に焦点を当て、その性質と神経基盤について、心理生理学的手法を用いて研究を行なった。本年度は、購買頻度や選好の高い刺激に対しては反応抑制が困難となるという仮説を立て、認知的制御の中でも抑制機能を検証する際に使われるGo/Nogo課題を用いた脳波測定実験で検証した。実験では、日本国内で実際に流通している商品・サービスを刺激として使用した。参加者ごとに各刺激の購買頻度を回答させ、特に頻度の高いものと低いものをNogo刺激に割り当てて課題を実施した。その結果、課題成績に関しては購買頻度による条件差は認められなかったものの、購買頻度の高いNogo刺激に対して反応抑制を行う場合は、購買頻度の低い刺激の場合に比べ、Nogo-N2と呼ばれる事象関連電位成分がより強く生じることが明らかになった。一方で、同じく反応抑制に際して生じるNogo-P3に関しては有意な条件差は得られなかった。N2成分は反応抑制プロセスの中でも反応競合による葛藤を反映するとされることから、購買頻度の高い刺激への反応抑制はより強い葛藤を生起させることが示唆された。今回の成果から、反応抑制パラダイムで得られる脳波を指標として用いることで、特定の商品やサービスへの選好の程度やこだわりの強さ、購買行動の多寡などを個人ごとに定量化できる可能性が示唆された。今後は、Nogo-N2がそのような選好や選択行動をどこまで反映できる指標であるかを検証する必要がある。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初は参加者に直接的な選好判断を下させるパラダイムを用いて実験を行なったが、参加者の反応に依存して分析可能なデータ量が大きく変動することから、代替として反応抑制パラダイム(Go/Nogo課題)を採用した。それにより、比較的安定的に脳波データを測定することができ、反復的な購買行動の背後にある刺激と反応の強い連合を示唆する結果を得ることができた。また、脳波データから参加者の選好や購買行動の傾向を識別・予測することが可能かを検証するため、初歩的な機械学習手法なども予定より早く導入を開始することができた。
|
Strategy for Future Research Activity |
Go/Nogo課題のパラダイムを用いることで、分析が可能なだけの脳波のデータが比較的安定して得られることが確認できたことから、基本的に今回のパラダイムをベースとして引き続き研究を進めていく。今年度に分析の対象としたNogo-N2成分が、刺激の選好や報酬性をどこまで反映しうるかを実験を通して検証するほか、脳波のデータから個人の選好や選択行動の傾向を識別・予測するための研究を進めていく。
|