2018 Fiscal Year Annual Research Report
機能性ペプチドカクテル修飾型エクソソームの腫瘍へのオンデマンド薬物送達技術
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18J15192
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Research Institution | Osaka Prefecture University |
Principal Investigator |
野口 公輔 大阪府立大学, 理学系研究科, 特別研究員(DC2)
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Project Period (FY) |
2018-04-25 – 2020-03-31
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Keywords | エクソソーム / 機能性ペプチド / 細胞内導入 / マクロピノサイトーシス / 細胞標的 / ペプチド化学 / がん受容体標的 |
Outline of Annual Research Achievements |
エクソソームは、直径30-200 nmの脂質二重膜で覆われた細胞が分泌する小胞で、私たちの血液や尿、唾液等の体液にも大量に含まれている。さらに、miRNAや酵素等の機能性分子を内包して分泌され、それらを他の細胞に運搬することで、細胞間コミュニケーションに寄与している。一方で、細胞毒性が無いことはもちろん、患者自身のエクソソームを治療に用いた場合に免疫原性の原因にならない等の理由から、次世代型ドラッグデリバリーツール(DDS)ツールとして期待されている。しかしながらDDSへ応用する上で、エクソソームの細胞内移行や細胞標的効率の改善が必要不可欠とされている。平成29年度までにおいて、申請者は、その細胞内移行に関する課題を解決するために、エクソソームの取込みに重要な細胞内取込み機構「マクロピノサイトーシス」を誘導する機能性ペプチド「アルギニンペプチド」をエクソソーム膜に簡便に化学修飾し、エクソソームの細胞内移行効率、及び、内包薬物のサイトゾル送達効率の顕著な改善に成功している。平成30年度では新たに本研究課題において、がん細胞など特定の細胞を標的する技術を更に組み込むことで、疾患に応じたオンデマンドなエクソソームDDSの実現に向けた技術基盤の構築を目的としている。そこで、ヒト乳腺がん細胞(MCF-7細胞)に対して選択的な細胞内移行を示す機能性ペプチド「sC18」をエクソソームに疎水基を介して簡便に修飾し、MCF-7細胞に対するエクソソームの細胞内移行効率を増強する技術開発を達成した。さらに、そのペプチド修飾がマクロピノサイトーシスの誘導することを明らかとした。引き続き、本研究課題における申請内容に沿って、そのエクソソームの受容体標的・細胞内移行性を詳細に検討している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
上記の通り平成30年度は、本研究課題目的である「がん細胞など特定の細胞を標的する技術を確立し、疾患に応じてオンデマンドに対応可能なエクソソームDDSの技術基盤の構築」に基づき、疎水基を結合したsC18を合成し、それを簡便にエクソソーム膜に修飾することで、ヒト乳腺がん細胞 (MCF-7)に対するエクソソームの細胞内取込みを増強させる技術開発を達成した。さらに、sC18を分岐型にした「(sC18)2」を合成し、それをsC18と同様の方法で、エクソソームに修飾した結果、sC18を修飾した場合と比較して効率的にエクソソームの細胞内移行を促進することを明らかとした。また、これまでsC18、及び、(sC18)2の詳細な細胞内取込み機構については不明であったが、sC18、或いは、(sC18)2をエクソソーム膜に修飾することでマクロピノサイトーシスが顕著に誘導されることを明らかとした。このマクロピノサイトーシスは、がん細胞に過剰発現している上皮成長因子受容体(EGFR)やケモカイン受容体CXCR-4、糖タンパク質等を介して誘導される。そのため申請者はマクロピノサイトーシスはがん標的、及び、その機構を明らかとする上で重要な機構であると考える。現在、本研究課題申請書に沿って、上記マクロピノサイトーシス関連受容体の形質膜発現量の異なるがん細胞を用いて、sC18、及び、(sC18)2、及び、それらを修飾したエクソソームの標的受容体を明らかとする研究を開始しており、それらペプチド修飾、及び、ペプチドの構造が細胞内移行機序やがん受容体標的に与える影響を明らかとする上で重要な知見が得られている。
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Strategy for Future Research Activity |
引き続き平成31年度以降も、申請研究内容(i)「各種がん細胞への効率的な取込みを可能とする機能性ペプチドカクテル修飾型エクソソームの技術開発とin vitro 実験における導入評価」に基づき、がん受容体を介して細胞内移行が促進されたエクソソームの内包物の放出が達成されているか、蛍光プローブ等を用いた物理化学的側面や分子生物学的な側面から解析し、細胞小器官や細胞内分子を標的とする薬剤活性とも総合的に評価、判断して優れた細胞、及び、がん受容体標的技術の開発研究を展開する。さらに、申請研究内容(ii)「機能性ペプチドカクテル修飾型エクソソームの担がんマウスにおける体内動態評価と抗がん剤送達」に沿って、これまでに用いた各種がん細胞を移植した担がんヌードマウスに対して、in vivo蛍光イメージングに最適な蛍光プローブを内包したエクソソームを投与し、経時的なエクソソームの体内動態・腫瘍集積性を評価し、得られた結果を、用いる機能性ペプチドの種類や設計にフィードバックし、細胞内取込みや細胞標的、サイトゾル送達、さらには血中滞留性や腫瘍集積性に関して優れた最適な手法の確立に繋げる。
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[Presentation] Development of intracellular delivery system based on exosomes derived from cells in low pH cell culture condition2018
Author(s)
Natsumi Ueno, Mie Matsuzawa, Kosuke Noguchi, Tomoya Takenaka, Ayaka Sugiyama, Nahoko Bailey Kobayashi, Takuya Hashimoto, Tomoka Takatani-Nakase, Eiji Yuba, Ikuo Fujii, Shiroh Futaki, Tetsuhiko Yoshida, Ikuhiko Nakase
Organizer
The 24th Peptide Forum in Kyoto, 2018
Int'l Joint Research
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