2018 Fiscal Year Annual Research Report
オンチップ高速流体制御を用いた局所的渦生成によるオンデマンド溶液混合
Project/Area Number |
18J15242
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
笠井 宥佑 名古屋大学, 工学研究科, 特別研究員(DC2)
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Project Period (FY) |
2018-04-25 – 2020-03-31
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Keywords | 溶液混合 / マイクロ流体チップ / 流体制御 / 噴流 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は,マイクロミキサの作製および,作製したデバイスを用いた高速溶液混合の実験を実施した.実験の結果,応答速度約0.5 msの高速溶液混合を達成し,さらに,導入する溶液の流量比を制御することによって混合後の溶液の濃度制御に成功した.本年度の研究成果を下記の3項目に分けて報告する. 1.高速溶液混合システムの構築:始めに,溶液混合のためのオンチップメンブレンポンプと,溶液の搬送および流量制御のための3Dフォーカシング機構を有する溶液混合システムを開発した.溶液混合デバイスとして,MEMS加工技術を用いて,ガラス-Si-ガラスの3層構造の高剛性マイクロ流体チップを作製した.溶液の流量は圧力ポンプを用いて制御し,流量を流量計で計測することで,溶液の流量比制御を可能とした. 2.オンデマンド局所渦生成実験:続いて,高速溶液混合のための局所渦生成実験を行った.実験の結果,20 usで噴流を生成し,40 usで局所渦を生成できることが確認出来た.生成した局所流の流速を評価するために有限要素法解析を用いて噴流の流速の推定を行ったところ,流速約20 m/sでの解析結果が実験結果とよく一致することが確認された.以上より,構築した実験システムにおいて,高速流体制御を用いてマイクロ流路中に任意のタイミングで局所渦を生成できることが確認できた. 3.高速溶液混合実験および濃度制御実験:最後に,高速溶液混合および流量比制御を用いた濃度制御の実験を行った.サンプル液とシース液の流量比は1対1とし,中心流速を1 m/sに設定した.応答速度評価のため,観察領域における輝度値の変化を計測した.実験の結果,従来技術の10倍以上の速さとなる0.5 msの応答速度を達成した.さらに,導入する溶液の流量比を変化させて溶液混合実験を行ったところ,流量比に応じて混合後の溶液の濃度が制御可能であることが確認できた.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
本研究では,高速かつオンデマンドオンチップ溶液混合システムの開発を目的とし,オンチップメンブレンポンプと3Dセルフォーカシング機構を有するマイクロ流体チップを作製することで,応答時間0.5 msという非常に高速なオンチップ溶液混合システムを構築した.オンチップメンブレンポンプを用いて,マイクロ流路内に約20 m/sの噴流を生成することに成功し,噴流を利用して約40 us以内に局所的にマイクロ流路中に任意のタイミングで渦を生成することに成功した.また,圧力ポンプと流量計を用いて溶液の流量比の制御にも成功している.ここまでで本年度の到達目標を達成しており,さらに次年度の到達目標である,溶液の高速混合の実験までを達成している.高速溶液混合の実験では,応答時間0.5 msで溶液の混合が完了することを確認しており,この値は従来技術と比較して約10倍の高速化を達成している.また,溶液の流量比を制御した際の混合後の濃度変化の実験を遂行しており,流量比に応じて混合後の溶液の濃度が制御可能であることを確認している.当該研究の論文執筆および学会発表も積極的に行っており,現在論文を投稿中であり,また,国際学会で受賞をするなどの業績も残している.以上より,本年度の設定目標を超えた研究成果を挙げており,現在の進捗状況は当初の計画以上に進展していると判断した.
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Strategy for Future Research Activity |
2年目の前半では,溶液混合による細胞への浸透圧ショックの印可に向けて,1年目に作製したマイクロ流体チップのデザイン変更・製作および混合速度の評価を行う.デザイン変更の際には,有限要素法解析を用いて,細胞のサイズに合わせて寸法を変更したマイクロ流路においても渦の生成と溶液の混合が可能であることを確認する.また,細胞を対象として再設計を行う際,従来以上に微細な加工が求められるため,必要に応じてSOIのデバイスレイヤーをSi層として使うなどの工夫を行う.設計変更後は混合速度なども従来設計と異なることが考えられるため,1年目と同様の評価方法で応答速度の評価を行う.2年目の後半では,細胞に浸透圧ショックを加えて,浸透圧ショックに対する時間応答の評価を行う.評価指標としては,浸透圧ショックによる体積の膨潤を想定し,細胞の体積変化を計測する.その後,細胞懸濁液および濃度の異なる培地の流量を制御し,溶液を混合することで,細胞に浸透圧ショック与える実験をし,溶液濃度が異なる場合の浸透圧ショック変化に対する時間応答の評価を行う.続いて,メンブレンポンプに周波数入力を加えることで細胞に断続的に浸透圧ショックを与え,細胞の浸透圧ショックに対する周波数応答の評価を行う.ここまでの内容で国内学会2件以上,国際学会2件以上,論文1編以上の成果を目標とする.
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