2018 Fiscal Year Annual Research Report
微小重力場におけるランダム分散液滴群の燃え広がり機構解明と噴霧燃焼モデルへの展開
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18J15253
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Research Institution | Yamaguchi University |
Principal Investigator |
吉田 泰子 山口大学, 創成科学研究科, 特別研究員(DC2)
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Project Period (FY) |
2018-04-25 – 2020-03-31
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Keywords | 微小重力 / 噴霧燃焼 / 液滴燃焼 / 群燃焼 / 液滴群 / 干渉液滴 / 燃え広がり / 燃え広がり限界 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では噴霧燃焼の機構解明のため,微小重力場での液滴燃焼による液滴間の燃え広がりメカニズムを解明することを目的としており,国際宇宙ステーションの「きぼう」日本実験棟において実施された燃焼実験のうち,干渉用液滴と燃え広がり調査用液滴から構成される液滴群要素を用いた燃え広がり実験と群燃焼発現限界付近の条件におけるランダム分散群の燃え広がり実験のデータの解析を主として行った. 液滴群要素実験では,デジタルビデオカメラから得られた液滴群要素の燃え広がり挙動から液滴Aから液滴Lへの燃え広がりの可否の判定,2液滴間の局所燃え広がり速度の算出,可視光TFPによる温度場計測を行った.その結果,これまで得られなかった詳細な燃え広がり限界距離分布が得られた.また,温度分布より,2および3液滴強干渉の条件では,干渉液滴の質量中心位置の中心として高温領域が円形に拡大し,干渉燃焼を維持したまま燃焼を終了することがわかった.また,干渉液滴の質量中心からの燃え広がり限界距離が液滴Aの燃焼寿命とともに増加することがわかった. ランダム分散液滴群実験では,近接する2液滴間の局所燃え広がり速度の算出、可視光TFPによる温度場計測を行い,高温先端位置を取得し,温度分布の作成を行った.その結果,群燃焼発生限界付近の条件において大規模着火が生じ,燃え広がり限界外に位置している液滴が予熱され,予蒸発することで生じたと考えられる.この原因を調査するため要素実験を実施しており,この結果についても解析を行った.その結果,冷炎が発生したことが起因していると予想しており,次年度に実施予定の研究にて更に調査する予定である.群燃焼発生限界付近の条件では,更に今回の宇宙実験で初めて観察された現象として既燃領域での低速火炎伝播も観察された. これらの成果を国際シンポジウム等で発表を行い,高インパクトファクターの学術誌に投稿を行った.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
国際宇宙ステーションの「きぼう」日本実験棟において実施された燃焼実験「ランダム分散液滴群の燃え広がりと群燃焼発現メカニズムの解明(Group Combustion)」のうち,干渉用液滴と燃え広がり調査用液滴から構成される液滴群要素を用いた燃え広がり実験,および,群燃焼発現限界付近の条件におけるランダム分散群の燃え広がり実験のデータの解析を主として行った.前者については,局所の液滴干渉効果と燃え広がり限界分布の関係を詳細に解析し,その成果はアイルランドのダブリンで開催された第37回国際燃焼シンポジウムにおいて発表するとともに,インパクトファクターIF=5.336のProc. Combustion Institute誌に掲載された.後者については,Microgravity Science and Technology誌(IF=1.357)に成果が掲載されるとともに,可視光TFP法を用いた温度分布解析およびそれに基づく局所燃え広がり解析へと展開を行っている.さらに,群燃焼発現限界付近で観察された特異燃焼挙動の解明のための要素実験についても解析を行っており,その現象の解明において重要となると考えられる冷炎の検出手法についても検討を行っている.以上のことから,本研究課題において期待以上の進展が見られた.
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Strategy for Future Research Activity |
今後は,地上実験における液滴群要素実験を実施する予定であり,低温酸化反応による冷炎が高温酸化反応による熱炎を誘起し,熱発生が生じるメカニズムを調査する.宇宙実験で用いた液滴群要素を再現し,短時間微小重力環境で燃焼実験を実施する.まずは,赤外線カメラと圧力センサーを実験装置に搭載し,燃焼実験を行う. SiCファイバーの発光輝度から1000K以下の低温度場領域の計測と圧力履歴の取得を行い,約750Kで発生している低温酸化反応である冷炎の有無を確認する.また,冷炎発生時の中間生成物であるホルムアルデヒドを高感度カメラと光干渉フィルタを用いて計測することで定量的な計測をすることも試みる. 地上実験で使用する山口大学落下実験施設は微小重力時間に限りがあり,通常は直径が0.5mmの液滴を使用している.しかし,冷炎が発生する時間は非常に短く,液滴直径が0.5mmでは時間・空間分解能の観点から燃焼現象の観察が困難になることが予想される.その場合は,落下距離50mを有する北海道のHASTIC赤平実験場を利用するなどして微小重力時間の確保を行い,できるだけ宇宙実験に近い大きな直径の液滴を使用することで,燃え広がり挙動の観察を可能にする.
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Research Products
(6 results)