2018 Fiscal Year Annual Research Report
有機カチオントランスポーターOCT2の内在性機能プローブ探索および生理機能の解明
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18J15304
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
三宅 健之 東京大学, 薬学系研究科, 特別研究員(DC2)
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Project Period (FY) |
2018-04-25 – 2020-03-31
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Keywords | 薬物相互作用 / トランスポーター / OCT2 / MATE2-K / N1-メチルアデノシン |
Outline of Annual Research Achievements |
トランスポーターは医薬品の体内動態における重要な決定因子であり、その阻害による薬物間相互作用の発生リスクを早期に把握するための方法論の開発は、医薬品開発の加速および安全性担保のために重要である。申請者は、腎排泄型の内在性代謝物であるN1-methyladenosine(m1A)について、有機カチオントランスポーターOCT2およびMATE2-Kが尿細管取り込み・排出を担うことを実験動物レベルで明らかにしてきた。そこで、m1Aがこれらの薬物トランスポーターの機能を反映するプローブとして利用できる可能性を検討すべく、研究を遂行した。 初年度の具体的な成果として、m1Aの腎排泄におけるOCT2/MATE2-Kの特異性を、腎臓の取り込みトランスポーターOATsの安定発現細胞や、排出トランスポーターBCRP、P-gpのノックアウトマウスを用いた実験から明らかにした。また、チロシンキナーゼ阻害剤がOCT2を阻害しうるとの報告に基づき、パゾパニブ、エルロチニブの投与患者の検体を収集したが、投与前後で血漿中m1A濃度の有意な上昇は認められなかった。このことは、両薬物の蛋白結合率の高さから、遊離型濃度としてOCT2を阻害する血漿中濃度に達していなかったことが原因と考えられた。 他方、トランスポーターの機能を左右する要因として、発現量の個人差も重要である。既報のゲノムワイド関連解析では、m1Aの血清中濃度はOCT2の遺伝子変異のみと相関し、その中にエキソンおよびプロモーター中の変異は含まれていなかった。レポーターアッセイの結果、イントロン中で当該の変異が集中する1kbp程度の領域がエンハンサー活性をもつことがわかり、責任転写因子を探索中である。また、3’非翻訳領域中の変異周辺に結合しうるmicroRNAの発現ベクターおよび定量系を作製し、OCT2の発現に及ぼす影響を検証中である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
m1AがOCT2/MATE2-Kのプローブとして利用できる可能性を検討するため、動物実験・臨床データを積み上げ、現在のところ優れた選択性を示すことを確認し、国際誌への論文投稿を行った。アミノ酸置換を伴うOCT2の変異体については、m1Aの輸送能が野生型と同等であることが確認されたことから、当該の変異に着目したヒト臨床試験は行わないこととした。また、MATE阻害剤ピリメタミンの用量漸増試験についてプロトコルを策定し、今夏実施予定である。他方、m1Aの血清中濃度に関するゲノムワイド関連解析のデータをもとに、OCT2の発現制御を担っている可能性のある遺伝子領域を新規に見出した。薬物動態の個人差を司る要因を新たに明らかにすべく、責任転写因子やmicroRNAの同定に向けて引き続き研究を推進する。
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Strategy for Future Research Activity |
MATE阻害剤ピリメタミンの用量漸増試験を製薬企業との共同研究により実施する。OCT2およびMATEの選択的な基質薬であるメトホルミンを同時投与し、AUCおよび腎クリアランスの変動をm1Aと比較評価する。また、m1Aの血漿中濃度推移および尿中排泄のデータについて数理モデル解析を行い、ピリメタミン投与による動態変動を再現できるようなin vivo阻害定数を算出するとともに、その阻害定数を用いてメトホルミンの動態変動を再現できるか否かを検証する。試験に先立ち、メトホルミンを基質とした場合とm1Aを基質とした場合とで、ピリメタミンのMATE2-K阻害定数がほぼ同等であることを、トランスポーター安定発現細胞を用いた取り込み試験で確認している。 OCT2の発現制御に関しては、エンハンサー領域の各変異により結合能が変動しうる転写因子をTranscription factor Affinity Prediction(TRAP)解析によって検索し、レポーターアッセイやゲルシフトアッセイを行うことで、責任転写因子の同定を目指す。また、3’非翻訳領域を組み込んだOCT2の安定発現系を樹立し、候補microRNAの共発現がOCT2の発現量に及ぼす影響を確かめる。さらに、OCT2を内因性に発現しているヒト腎臓由来細胞株に当該の変異を導入し、OCT2の発現量が変動するか否かを検証する。
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