2018 Fiscal Year Annual Research Report
Elucidation of Mycoplasma pneumoniae type gliding mechanism using kinetic measurements
Project/Area Number |
18J15362
|
Research Institution | Osaka City University |
Principal Investigator |
水谷 雅希 大阪市立大学, 大学院理学研究科, 特別研究員(DC2)
|
Project Period (FY) |
2018-04-25 – 2020-03-31
|
Keywords | 滑走運動 / 細胞接着 / エネルギー源 / ATP / シアル酸オリゴ糖 / ヒル係数 / 粘性 / マイコプラズマ |
Outline of Annual Research Achievements |
マイコプラズマ・ニューモニエ型の滑走運動を特徴づけるために、培養が容易で菌体の形状が安定しているマイコプラズマ・ガリセプティカムを用いて、その滑走運動を様々な条件下で計測した。菌体はシアル酸オリゴ糖をコートしたガラス上を約0.3 μm/sの速度で概ね真っすぐ滑走した。次に、菌体表面に金コロイドを結合させ、暗視野顕微鏡法で観察したところ、菌体の中心と金コロイドの中心の軌跡は常に一定の間隔を保っていたことから、滑走時に菌体は回転していないことが示唆された。また、粘性条件下での滑走運動を解析した。すると、フィコールでは4.6 mPa sの粘性下で滑走速度は50%低下したのに対し、メチルセルロースでは7.3 mPa sの高粘性下でさえ速度は14%しか低下しなかった。生体内に存在する粘性物質はメチルセルロースと同様の繊維状ポリマーであるため、これらは生体内でもうまく滑走できるような仕組みであることを示唆する結果であった。 菌体とシアル酸オリゴとの結合の特徴を調べるために、遊離のシアル酸オリゴ糖を加え、結合の阻害率を解析したところ、結合はS字曲線状に低下した。ここから結合のヒル係数を計算すると1.6であった。このことは、菌体が宿主に結合しやすい仕組みになっていることを示している。滑走ゴースト実験を行った。滑走している菌体を界面活性剤Tritonで処理すると、細胞膜に穴が空き細胞質が細胞外へ流出することで滑走運動は停止する。しかし、TritonにATPを混ぜた溶液で菌体を処理すると細胞質が流出しているにもかかわらず、菌体はゆっくりではあるが滑走運動を続けた。このことから、この滑走運動のエネルギー源はATPであることが示唆された。 これらの結果をまとめた論文を筆頭著者としてbioRxivにて公開した 。さらにJournal of Bacteriology誌に投稿し、現在審査中である。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究計画に記載していた内容の多くを実施し、その結果を論文としてまとめ、既に学術誌に投稿出来ているから。
|
Strategy for Future Research Activity |
本年度は肺炎型だけでなく、モービレ型にも注目して実験を行っていく予定である。 肺炎型については、昨年度と同様、トリの病原菌でヒトマイコプラズマ肺炎原因菌の近縁種であるマイコプラズマ・ガリセプティカムを用いて実験を行っていく。1)糖鎖で表面をコートしたガラス上に飢餓状態で結合のみしている菌体にビーズを付け光ピンセットで力学的に引き剥がすことで、菌体と糖鎖との結合力を測定する。また前方向と後ろ方向に引き剥がす時の力を比較することで結合に方向性があるかを確かめる。2)滑走運動を行っている菌体にビーズ付け光ピンセットでストールさせることで菌体の推進力を測定する。3)遊離の糖鎖を用いてガラス表面に固定されている糖鎖をつかむアドヘジンの数を減少させ、推進力を測定することで、動きと力発生の素過程を明らかにする。 モービレ型については、淡水魚の病原菌であるマイコプラズマ・モービレを用いる。1)これまでの研究ではあしの動きを菌体の動きから予測してきたが、あしの動きをより直接的に観察するために、菌体をガラス表面に非特異的に張り付け、上部に露出しているあしに光ピンセットで補足したビーズを結合させ、その動きを解析する。2)Gli349欠損株を用いて同様に実験を行うことでGli521の動きを可視化、測定する。3)Gli521とGli349のアラインメントを担うGli123の欠損株で同様の実験を行い、アラインメントの重要性を確かめる。4)Gli349に光ピンセットを用いて前方向または後ろ方向に軽く引っ張り張力をかけ、その時のあしの引っ張る頻度を解析することで、あしの張力感受性を確かめる。
|