2018 Fiscal Year Annual Research Report
触媒のレドックス制御が拓くアジン自在官能基化法の開発
Project/Area Number |
18J15406
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
山田 柊哉 名古屋大学, 理学研究科, 特別研究員(DC2)
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Project Period (FY) |
2018-04-25 – 2020-03-31
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Keywords | ピリジン / パラジウム / 炭素ー水素結合活性化 / 2,2'-ビピリジル |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度の研究計画に従い、まずピリジンのC2位選択的活性化に向けた含ホウ素ピンサー型配位子の合成に取り組んだ。しかしながら、2018年中尾らの研究グループが同様のコンセプトで触媒的ピリジンのC2位の官能基化を達成し(J. Am. Chem. Soc. 2018, 140, 7070.)、別のアプローチで本研究を再開することとした。新たに着目したのは、以前見出していたピリジンのC2位での酸化的二量化反応である。本反応は過去の研究過程で発見した副反応であり、パラジウムを触媒にし銀塩を酸化剤に用いることで、多種多様なピリジンさらには他の含窒素ヘテロ芳香環がC2位選択的に二量化する反応である。これにより、入手容易なパラジウム触媒と銀塩から、ピリジンのC2位選択的な炭素―水素結合活性化が可能であることが明示された。また、得られる生成物は触媒化学、構造化学で重要な2,2'-ビピリジル配位子であり、合成化学的にも非常に興味深い反応である。そこで、研究計画とは異なるがピリジンのC2位選択的な二量化反応について精査することとした。開発した最適化条件について各種反応剤の効果を調べたところ、この二量化反応はピリジルーPd(II)活性種を中間体として、銀塩がPd触媒の0価ーII価レドックスサイクルを回転させている結果が得られた。申請段階では高原子価Pd(IV)種がピリジンのC2位活性化に関与していると予想していたが、これとは異なる結果であり、ピリジンの位置選択的な炭素―水素結合活性化を達成する上で新たな知見である。最終的に本研究はドイツ化学会のAngewandte Chemie誌において報告した(DOI: 10.1002/anie.201814701)。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
第一課題に設定していたC2位選択的官能基化触媒の開発とそれに向けたピンサー型配位子の合成は当初の予定通りには進まなかったものの、副生成物の発見を基にピリジンC2位の炭素―水素結合活性化がPd(II)種で達成可能であることが明らかとなった。申請当初、C2位活性化には高原子価Pd(IV)種の発生が必要だと考えていたが、銀塩という温和な酸化剤を用いたパラジウム0価ーII価レドックスサイクルがC2位を活性化する知見は予想外であり、今後の研究を進めていく上で大きな進展である。
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Strategy for Future Research Activity |
開発したパラジウム・銀触媒系が各種アジン類のC2位を選択的に活性化することから着想を得て、今後は本触媒系をベースとした他の求核種との酸化的クロスカップリング法の開発へと拡充していく。特に、機能性分子の部分骨格として頻繁に見られる2-アリールピリジン類、非対称2,2'-ビピリジル配位子などの簡便合成を目標とする。C2位への自在官能基化導入法を開発した後は、随時他の位置選択的炭素―水素結合活性化を実現する触媒の設計へと着手する。
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Research Products
(2 results)