2019 Fiscal Year Annual Research Report
新規不斉オニウム塩-遷移金属ハイブリッド型触媒反応系の開発
Project/Area Number |
18J20042
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
劉 詩堯 東京大学, 工学系研究科, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2018-04-25 – 2021-03-31
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Keywords | ルテニウム / 末端アルキン / 不斉合成 / プロパルギル置換反応 / 含リン化合物 |
Outline of Annual Research Achievements |
光学活性な含リン化合物はその独特な性質のゆえ、医薬品、農薬、機能性材料などの開発において有用な化合物としてよく知られている。そのため、キラル含リン化合物の合成は重要な課題の一つとして古くから研究されている。 一方、有用な官能基である末端アルキンを化合物にエナンチオ選択的に導入する手法として、触媒的な不斉プロパルギル位置換反応は近年注目を集めており、多様な炭素およびヘテロ原子求核剤を適用することが達成されてきた。しかし、実用的な反応が数多く開発されたにもかかわらず、不斉プロパルギル位置換反応においては、リン原子を求核剤として利用することは未だに成功例が無かった。以上の研究背景を踏まえ、私はリン中心を有する化合物を求核剤として用い、ルテニウム触媒によるプロパルギルアルコールの不斉プロパルギル位置換反応の開発に興味を持ち、検討に取り組んできた。 本触媒反応の実現に向けて、私は最初に触媒量の光学活性な硫黄架橋二核ルテニウム錯体及びNH4BF4の存在下で、ジクロロエタン溶媒中にプロパルギル位に様々な置換基を有するプロパルギルアルコールとジフェニルホスフィンオキシドとの反応を試みた。その結果、プロパルギル位にトリフルオロメチル基を有するプロパルギルアルコールを用いた場合は良好な収率およびエナンチオ選択性でキラルプロパルギルジフェニルホスフィン生成物を得ることができた。次にトリフルオロメチル基を有するプロパルギルアルコールを用い、様々な反応条件を検討した結果、テトラクロロエタンを反応溶媒として用いた場合、高収率および高エナンチオ選択的(最高94% ee)に目的生成物を合成することに成功した。更に、反応生成物であるプロパルギル基を有するキラルジアリールホスフィンオキシドを原料として用いた場合、光学純度を失わずにSonogashiraカップリングやHuisgen環化反応を行うことに成功した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
2019年度において、私は当研究室が独自開発した光学活性な硫黄架橋二核ルテニウム錯体を触媒として利用し、これまで困難とされていたリン求核剤を用いたエナンチオ選択的プロパルギル位置換反応を開発することに成功した。本研究は世界初のリン求核剤を利用したエナンチオ選択的不斉プロパルギル位置換反応の例である。
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Strategy for Future Research Activity |
昨年度に得られた知見を踏まえ、新規エナンチオ選択的プロパルギル位置換反応の開発に取り組む。具体的には、今までエナンチオ選択的プロパルギル位置換反応系における求核剤としての使用が困難とされているフッ素原子および他の未開発な炭素求核剤の適用を検討していく。 また、反応の反応性および選択性を精密制御するため、不斉有機分子触媒(キラルリン酸、キラル相間移動触媒など)と遷移金属(Ru, Cuなど)の組み合わせも検討していく。
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