2019 Fiscal Year Annual Research Report
「赤ちゃんらしさ」の認知の進化に関する比較認知科学的研究
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18J20077
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
川口 ゆり 京都大学, 理学研究科, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2018-04-25 – 2021-03-31
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Keywords | 年齢認知 / 幼児色 / 顔認知 / チンパンジー / 幼児図式 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度、チンパンジーが乳児刺激をどのように認知しているかを調べるための以下に示す3つの研究をおこなった。 まず、乳児刺激に対するチンパンジーの情動変化をサーモグラフィから探る研究をおこなった。チンパンジーに乳児あるいはおとなの視聴覚刺激を呈示し、刺激提示前、中、後のチンパンジーの鼻の表面温度から刺激提示による情動変化を評価した。刺激による温度変化はわずかに確認されたものの、アーチファクトを除去することが困難であった。 次に、モーフィング刺激を用いてチンパンジーが乳児顔とおとな顔を弁別する際に顔の形態情報と色情報のどちらを用いているかを検討した。さらに、顔画像の解析をおこない、おとなと乳児の顔に形態、色の特徴量の差がどれほどあるのかを調べた。その結果、チンパンジーのおとなと乳児の顔には形態、色、両方において統計的に有意な差が存在するにもかかわらず、チンパンジーが年齢カテゴリーを弁別する際には色情報のほうがはるかに重要であることを発見した。 最後に、オキシトシン投与が乳児への視覚的注意にどのような影響を及ぼすかを調べた。チンパンジーに対してオキシトシンもしくは生理食塩水を経鼻投与し、その後同種のおとなと乳児の視覚刺激を呈示し、アイトラッカーを用いて乳児への注視時間がオキシトシン投与によって変化するかを調べた。この研究は現在進行中である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
計画通り、モーフィング刺激を用いた見本合わせの共同研究が完了した。結果を論文としてまとめて国際誌に投稿した。また、もう一つの計画であった乳児刺激に対するチンパンジーの情動変化をサーモグラフィから探る研究もおこなった。最後の計画であった、ヒト乳児を対象にした実験はおこなわなかったが、代わりにチンパンジーの視覚的注意似たするオキシトシン投与の影響を調べる研究をおこなった。成果発表としてはこれまでの研究成果を国内外の学会で発表し、国際誌2報に論文が掲載された。
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Strategy for Future Research Activity |
モーフィング刺激を用いた研究パラダイムの有用性が確認されたため、年齢認知以外の顔処理(例:性別)において用いられる手がかりを明らかにし、我々の研究で明らかになった顔処理における色情報の優位性がチンパンジーにとって普遍的なのか、年齢特異的に限られるのかを調べる。ヒトで従来おこなわれてきた手法を類人猿に適用することで、ヒトと類人猿の顔認知の類似点、相違点を洗い出すことができると期待している。
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