2018 Fiscal Year Annual Research Report
超低損失パワーデバイス実現に向けた窒化ガリウムのアバランシェ破壊特性の解明
Project/Area Number |
18J20080
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
前田 拓也 京都大学, 工学研究科, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2018-04-25 – 2021-03-31
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Keywords | 窒化ガリウム / パワーデバイス / 絶縁破壊 |
Outline of Annual Research Achievements |
窒化ガリウム(GaN)はイオン注入によるp型領域形成が困難なため,他材料で用いられる端部終端構造の形成が難しく,これまでの試作報告では,素子端部の電界集中が生じた部分で(予想される理想耐圧よりも低い電圧で)局所的な絶縁破壊が生じている.GaNの物性を最大限引き出し,アバランシェ破壊特性を正確に評価するには,電界集中が生じない素子を実現できる端部終端構造が必要である. そこで端部終端構造の検討を行い,ベベルメサ構造に着目した.メサ角度(θ)・エピ層のドーピング密度(Na, Nd)・膜厚をパラメータとして,ベベルメサ構造の電界分布についてシミュレーションにより調べた.現状,GaNは結晶成長やデバイスプロセスに技術的な制約があるが,その中で作製可能な構造を模索し,θが小さく,Na/Ndが1に近いほど,電界集中を緩和することができ,特に,p, n層のドーピング密度がほぼ同濃度(Na/Nd~1)のとき,電界集中が生じないことを見出した.このp層, n層の両側に空乏層が伸びる「両側空乏ベベルメサ」構造を有するGaN p-n接合ダイオードを設計・作製し,その評価に取り組んだ. 作製したデバイスの逆方向電流-電圧特性を評価したところ,リーク電流は低く,絶縁破壊しても素子の物理的な破壊に至らない高いアバランシェ耐量が見られた.絶縁破壊電圧は温度上昇とともに増加するという典型的なアバランシェ破壊の温度依存性を示した.絶縁破壊時のデバイスを観察したところ,p-n接合のほぼ全面で白色発光が見られた.これは,デバイスに電界集中が生じておらず,局所的ではなく面内均一な(ほぼ理想的な)アバランシェ破壊が生じていることを強く支持する結果である.絶縁破壊時の最大電界は2.8-3.5 MV/cmを示し,これらは過去のGaNデバイスの報告の中で最大の値である.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
当初,素子端部で生じる電界集中の緩和が難しく,理想耐圧を示すデバイスの作製の難航が予想されたが,シミュレーションで得られた知見を活用して,デバイス設計および作製を工夫することで,理想耐圧を示すデバイスの実現に成功した.そのため,予想以上に進境が著しく,研究の進展が得られている.
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Strategy for Future Research Activity |
今後は,GaNにおける電子と正孔の衝突イオン化係数の測定に取り組む.まず,作製した電界集中が生じないデバイスに対して光を照射し,その誘起電流の逆バイアス電圧依存性を測定することで,アバランシェ増倍係数を調べる.その後,アバランシェ増倍係数を数値解析することで,小膣イオン化係数を求めることができると考えている.得られた衝突イオン化係数を用いて耐圧シミュレーションを行い,実験値や他機関の報告値と比較し,その精度を確認する.以上により,GaNにおけるアバランシェ破壊特性の解明を目指す.
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