2019 Fiscal Year Annual Research Report
自発的過換気が高強度運動時の生理応答に及ぼす影響-新トレーニング法開発に向けて-
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18J20086
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
土橋 康平 筑波大学, 人間総合科学研究科, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2018-04-25 – 2021-03-31
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Keywords | 低炭酸ガス血症 / 呼吸性アルカローシス、 / 細胞内アルカローシス / 呼吸筋 / 循環応答 / 無酸素性代謝 |
Outline of Annual Research Achievements |
運動前に自発的過換気を行うと、高強度運動時の有酸素性エネルギー供給量が低下し、それを代償するように無酸素性エネルギー供給量が増加すること、また、高強度運動時および回復時の循環応答が抑制することが示唆されている。しかしながら、このような生理応答が起こるメカニズムは明らかではない。自発的過換気は体内の二酸化炭素 (CO2) を過剰に排出し、動脈血CO2分圧を低下させるが、多くの先行研究では動脈血CO2分圧を低下させるために運動前に15分以上の過換気を行っており、この長時間の過換気は活動筋における細胞内のCO2も低下することを示唆している。これらのことから有酸素性代謝および循環応答の抑制は動脈血CO2分圧の低下あるいは細胞レベルのCO2の低下が要因なのか明らかではない。そこで本年度においてはCO2低下のレベルの違いを検討するため、運動前自発的過換気の継続時間の違いが高強度運動および回復時の生理応答に及ぼす影響を検討した。健康な成人男性13名を被験者とし、60秒間の高強度一定負荷自転車運動 (120%最大酸素摂取量強度) を行った。条件は、運動前に1) 自由呼吸で安静をとる条件、2) 5分間の過換気を行う条件、および3) 20分間の過換気を行う条件の3条件とした。測定項目は呼気ガス、動脈血圧、心拍数、心拍出量、主観的運動強度とした。 高強度運動時の酸素摂取量は両過換気条件で自由呼吸条件より低値を示し、過換気条件間での差は見られなかった。また、高強度運動および回復時の動脈血圧は両過換気条件で自由呼吸条件よりも低値を示したが、心拍数は過換気20分条件のみで他の2条件より低値を示した。これらの結果から、有酸素性代謝および動脈血圧の抑制には短時間の、心拍数の低下には長時間の自発的過換気が影響していることが示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度においては、昨年度に確立した、1心周期ごとの循環応答の測定を可能にした高強度運動モデルを用いて、運動前自発的過換気の継続時間の違いが高強度運動および回復時の生理応答に及ぼす影響を検討するという計画に基づいて着実に研究を推し進めた。また、研究結果を国際学会で発表し、論文投稿に係る重要なディスカッションを海外の研究者と行い、自発的過換気時間の違いが全力運動時の呼吸代謝応答に及ぼす影響についても検討し、より現場への応用を目指した運動様式の検討も行った。さらに、本年度では自発的過換気による動脈血CO2分圧の低下が中枢化学受容器に及ぼす影響について、運動強度の違いの影響を検討するという計画に基づき着実に研究を推し進めた (現在も継続中)。さらに、昨年度の研究結果を踏まえ、動脈血CO2分圧の低下が末梢化学受容器反射に及ぼす影響や中枢化学受容器反射との相互作用について検討するという計画をたて、予備実験を行った。
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Strategy for Future Research Activity |
当初の研究計画通り、運動前自発的過換気が異なる運動強度における運動時および回復時の呼吸代謝および循環応答に及ぼす影響を検討することを目的として実験を継続していく。また、昨年度の研究結果から、自発的過換気による動脈血CO2分圧の低下は中枢化学受容器反射を抑制することで運動時の循環応答を抑制する可能性があることが示唆された。従って、中枢化学受容器に加え、血中のCO2分圧の変化を感知し、運動時の呼吸循環応答を調節する末梢化学受容器の影響を検討するための研究を同時に行う予定である。
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