2018 Fiscal Year Annual Research Report
白金系ナノ粒子/酸化物/積層型カーボンナノチューブの電極触媒特性と耐久性の向上
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18J20219
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Research Institution | Kanagawa University |
Principal Investigator |
安藤 風馬 神奈川大学, 工学研究科, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2018-04-25 – 2021-03-31
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Keywords | 電極触媒 / 金属酸化物 / カーボンナノチューブ / d-バンドセンター |
Outline of Annual Research Achievements |
Ptの担持体にMOx /CSCNT (M = Ti, Nb, Ta, W)を使用することで、Ptのd-バンドセンターに対し、Pt-MOx間における相互作用での変化を与え、ORR活性の変化を評価したところ、d-バンドセンターがPt/CBよりも0.2 - 0.3 eVシフトしたサンプルが非常に高いORR活性を有することが判明した。しかし、0.3 eV以上シフトしたサンプルからはORR活性の向上は見られなかった。このことから、実際の触媒の評価でもDFT計算を用いて予測される理論的な結果と同様の山型のプロットを得ることができ、MOx上に担持したPtのd-バンドセンターとORR活性の向上の相関を示す結果を得ることができた。 PtPb/TiO2/CSCNTにおいては、初期サイクルでのORR反応はPt/CBに劣る結果であったが、電位を掃引させ続けることで活性の向上がみられた。 特に、200 cycle電位を掃引させた触媒は、これまでのPt電極触媒よりも高いORR活性を示していた。XPSを用いてPtとPbの電子状態を測定し、ピーク面積における組成比の計算及びd-バンドセンターの算出を行ったところ、ORR活性とd-バンドセンターとの相関を示唆する結果を得ることができた。 PtPbナノ粒子の初期サイクルのサンプルはPt/CB及びPt/TiO2/CSCNTのd-バンドセンターよりも大きくシフトしており、Pbを添加することによってPtの価電子帯の電子状態に変化を与えたことによるものであると考えられる。サイクルを重ね、Pbを溶出させることでd-バンドセンターがPtのプロットに近づく結果が得られた。以上の結果から、ORR活性の向上にはd-バンドセンターの調整が重要であることが確認された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
白金系ナノ粒子/酸化物/積層型カーボンナノチューブの電極触媒特性の検討に関して、Pt触媒、およびPt系金属間化合物上での電気化学的酸素還元反応(ORR)の触媒活性と触媒上のPtの電子状態との関係性を明らかにすることを検討した。その中で、Ptのd-バンドセンターとORR活性との関係が火山型の関係を示すことをデータとして得ることができた。この結果は、これまで様々な研究者が提言し、簡単な組成の触媒において、この関係性を報告しているが、金属間化合物の脱合金化過程、Ptを担持する金属間化物の種類を変えるなどを行って、Ptの電子状態を変えることによって、ORR活性が連続的に変化することを明らかにしている。これはこれまでにない研究成果であり、ORR活性とd-バンドセンターの関係性を明らかにする重要なデータになる。これらの結果は今後、論文化するが、その結果は著名なジャーナルに掲載することができると考える。今年度以降は、もう一方の触媒の耐久性の改善として、白金系ナノ粒子/酸化物/積層型カーボンナノチューブにおけるカーボンナノチューブの酸化耐性を強化することをが検討しているが、この点をより深く進めることで、この研究は当初の目的を完成することができる。
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Strategy for Future Research Activity |
以上の研究で、カップスタックカーボンナノチューブ(CSCNT)触媒担持体の表面にTiO2を析出させ、さらにTiO2上にPtを析出させたPt/TiO2/CSCNTは従来のPt/CBよりも高いORR活性を有することを明らかにした。また、白金-鉛金属間化合物ナノ粒子(Pt-Pb)/TiO2/CSCNT触媒では、電位を掃引することでPbが溶出し、それに伴ってORR触媒活性が変化し、ORR活性とPtのd-バンドセンターとの間にvolcanoタイプの相関関係があることが分かった。これは、Pt-TiO2およびPt-Pb間における電子的相互作用によると考えられる。次の目的としてPtのd-バンドセンターを任意に制御することを目的として、種々の元素(M1, M2)を含む複合金属酸化物(M1M2Ox)上にPtを担持させたPt/M1M2Ox/CSCNT触媒を合成し、ORR触媒能、価電子領域の電子状態の評価及びTEMによる表面観察を行い、Ptのd-バンドセンターとORR触媒活性との相関性を検討する。
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