2018 Fiscal Year Annual Research Report
可視広帯域かつ単分子空間分解能を有する吸光度イメージング技術の開発
Project/Area Number |
18J20248
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
加藤 遼 大阪大学, 工学研究科, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2018-04-25 – 2021-03-31
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Keywords | 近接場光学顕微鏡 / 吸光分析 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、可視広帯域かつ単分子空間分解能での吸光分析の実現である。そのためには2つの課題に取り組む必要がある。1つ目は、ナノ吸光分析技術の測定可能領域の拡張である。我々の先行研究で実証した通り、既存ナノ吸光分析技術では、波長488nm,594nmでの吸光分析が可能であった。これを可視広帯域で実現することが課題である。2つ目は空間分解能の向上である。単分子スケールの空間分解能での吸光分析は、分子の吸光メカニズムの解明に繋がる。当該年度では、1つ目の課題である測定領域の拡張に取り組むことで、可視広帯域での吸光分析が可能であることを実証した。 初めに、当初の研究方針であった、異なる波長のレーザーを光学系に加えてシリコンのラマン散乱光測定を実施した。442nm,532nm,及び633nmで励起されたシリコンチップからのシリコンのラマンシグナルを観測した。また、カーボンナノチューブ試料上で、シリコンラマン散乱プローブ光の減少を確認した。その後、波長532nmレーザーを用いて半導体型カーボンナノチューブの近接場吸光度イメージングを実施した。波長532nmにおけるカーボンナノチューブの吸光特性をナノ空間分解能で観測できることを実証した。 また、探針からのラマン散乱光ではなく、蛍光シグナルを利用した手法も実証した。次年度では、全反射照明を用いた近接場光学測定を実施し、ナノ吸光度イメージングの検証及び空間分解能の向上に注力したいと考えている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
当該年度の研究成果は十分に進展している。既存のナノ吸光分析技術では、波長488nmおよび594nmの2波長での吸光分析に限られていた。初めに、測定領域の拡大を実証した。442nm、532nm、633nmレーザーを用いてシリコンのラマン散乱光測定を実施した後、波長532nmを用いてカーボンナノチューブの高分解能吸光イメージングを実証した。また、探針からのラマン散乱光ではなく、蛍光シグナルを利用した広帯域吸光イメージングの実証も行なった。これらの結果から、測定可能波長領域が440-750nmの可視広帯域まで拡張された。次年度では、分解能の向上を図ることで本研究目的を達成することが可能である。以上の理由より、今年度の研究成果は計画以上に進展している。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、今年度拡張した測定可能領域において、ナノ吸光度イメージングの検証及び空間分解能の向上に注力したい。また、測定の安定性を向上させるために、全反射照明法を用いた近接場光学測定も実施する。測定内容は、金属型・半導体型のカーボンナノチューブの吸収イメージングもしくは、遷移型金属ダイカルコジナイド物質(MoS2, WSe2)等のバンドギャップイメージングを検討している。分解能向上のために、カーボンナノチューブ探針、もしくはシリコン探針をイオンリソグラフィー等で加工することも検討している。
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