2019 Fiscal Year Annual Research Report
高難度物質変換を指向した細胞表面提示バイオハイブリッド触媒の進化型構築
Project/Area Number |
18J20249
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
加藤 俊介 大阪大学, 工学研究科, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2018-04-25 – 2021-03-31
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Keywords | バイオハイブリッド触媒 / 人工金属酵素 / 指向性進化法 / Directed evolution / ロジウム錯体 / C-H結合官能基化 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、C-H結合官能基化において触媒活性を示すCp*Rh錯体と、β-バレルタンパク質であるニトロバインディン(NB)とを組み合わせたバイオハイブリッド触媒(NB-Rh)の開発に取り組んでいる。令和元年度は、このNB-Rhの更なる触媒活性の向上をめざし、指向性進化法(directed evolution)によるタンパク質反応場の改変を行った。まず初めに、本研究課題の実現のため、アフィニティー精製を用いた新規ハイスループットスクリーニング(HTS)手法を開発した。このHTS手法により、膨大なバイオハイブリッド触媒変異体ライブラリを、宿主大腸菌細胞に由来する不純物が存在しないクリーンな触媒反応系においてスクリーニングすることが可能となった。次に、この新規HTS手法を活用して、実際にバイオハイブリッド触媒NB-Rhの指向性進化を実施した。Cp*Rh金属補因子近傍の24か所のアミノ酸残基を選定し、site-saturation mutagenesis(SSM)によりランダムな変異導入を行うことで、NB-Rh変異体ライブラリを調製した。そして、オキシムとアルキンの付加環化反応を実施し、生成物のイソキノリンに由来する蛍光強度からC-H結合官能基化に対するNB-Rh変異体ライブラリの触媒活性を評価した。3世代にわたって約4,000以上の変異体ライブラリをスクリーニングした結果、変異導入前のNB-Rhと比較して、4.9倍の触媒活性を示すNB(T98H/L100K/K127E)-Rh変異体を獲得した。分子動力学計算の結果から、指向性進化により変異導入されたHis98、Lys100、およびGlu100残基は、Cp*Rh(III)金属補因子を覆う形で位置し、触媒活性の向上に寄与していることが示された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
指向性進化法(directed evolution)によるタンパク質改変技術をバイオハイブリッド触媒へと応用することは非常に挑戦的である。これは、宿主細胞内で発現するタンパク質と非天然の合成金属補因子を複合化し、触媒活性を評価するハイスループットスクリーニング(HTS)系を確立することの困難さに起因する。この課題を解決することをめざし、本年度は、宿主細胞環境下で反応スクリーニングを行う従来手法とは一線を画し、アフィニティー精製を活用した新規HTS手法を確立した。この新規HTS手法は、タンパク質変異体ライブラリの精製と合成金属錯体の導入を同時に実施し、宿主細胞に由来する不純物が存在しない条件下での反応スクリーニングを実現する強力な手法となった。そして、このHTS手法を活用してCp*Rh錯体を活性中心に有するバイオハイブリッド触媒の指向性進化を実施した。約4,000以上の変異体ライブラリのスクリーニングを行った結果、C-H結合活性化を経由するアリールオキシムとアルキンの付加環化反応において高い触媒活性を示すバイオハイブリッド触媒変異体を獲得することに成功した。当初の年次計画どおり、目標であったバイオハイブリッド触媒の指向性進化法による改変を現時点で達成したため、今後は反応機構に関する詳細な解析に取り組む。
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Strategy for Future Research Activity |
上記の指向性進化法により獲得した高活性バイオハイブリッド触媒変異体に対して、今後、反応機構に関する詳細な解析を実施する。約4,000以上の変異体ライブラリをスクリーニングした結果得られたバイオハイブリッド触媒NB(T98H/L100K/K127E)-Rh変異体は、変異導入前のNB-Rhと比較して、C-H結合活性化を経由するアリールオキシムとアルキンの付加環化反応において4.9倍の高い触媒活性を示すことが判明した。今後、この高い触媒活性を示すNB変異体に対して、X線結晶構造解析や分子動力学計算などの詳細な解析を実施することで、Cp*Rh(III)錯体近傍のタンパク質反応場の立体構造を明らかにし、反応機構に対するより具体的な知見を得る。また同時に、得られた知見を基づき、再度くりかえしNB(T98H/L100K/K127E)-Rh変異体に対して指向性進化を実施することで、更なる触媒活性の向上をめざす。
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Research Products
(5 results)