2018 Fiscal Year Annual Research Report
制御された流路および反応場をもつ高分子ゲルの開発とフロー触媒合成プロセスへの応用
Project/Area Number |
18J20345
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
松本 光 九州大学, 工学府, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2018-04-25 – 2021-03-31
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Keywords | 多孔質材料 / ポリスチレン / トリフェニルホスフィン / パラジウム / 錯体 / Suzukiカップリング |
Outline of Annual Research Achievements |
ポリスチレン製の多孔質ゲルを作製し、その際に金属触媒に対するホスフィンリガンドを導入することで、パラジウム触媒を固定できる材料を開発した。各種電子顕微鏡、細孔分布測定装置、および固体核磁気共鳴法により、材料の多孔性およびパラジウムとホスフィンの配位状態を評価した。この時のパラメータとして、フロー合成に利用できる孔を形成すること、また高活性なパラジウム-ホスフィン錯体を形成すること、そして反応物が迅速に移動すること、以上3点を要請する条件として課した。検討の結果、多孔質構造を保持しつつ、パラジウムに対して1:1で選択的に配位するポリスチレン-ホスフィン複合材料を得ることに成功した。さらにこの選択性が、ポリスチレンの材料となるモノマーの配合比によって、チューニングできることを新たに見出した。 多孔質ポリスチレンゲルに形成されたパラジウム-ホスフィン錯体を用いて、まずバッチ型でのクロスカップリング反応を行った。この錯体は不活性な塩化アリールを含むSuzukiカップリング反応を、40℃、2時間という温和な条件下で速やかに進行した。さらにこの活性は、材料内の多孔質構造およびパラジウム-ホスフィン錯体の配位数に非常に強く影響されることも見出した。この多孔質ポリスチレンゲルに固定されたパラジウム触媒は、複数種の塩化アリールに対しても適用できる一般性をもっていた。しかしながら、この材料をカラム内で重合し、フロー操作に適用すると、圧力が高くなりすぎ、実用的でないことも示唆された。 そのため、多孔質構造の新たな作製手法を模索した。検討の末フロー操作が可能な多孔質ポリスチレン-ホスフィン複合材料の作製を得ることができた(発明届に関する内容)
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
多孔質ポリスチレンへ導入するホスフィン配位子の合成は、北海道大学理学研究院へ実際に赴き、技術提供を受けることで、計画通り達成できた。またこれを共重合し、さらに多孔質化するステップも、当機関での既往研究の技術を適用することでおおむね良好に達成することができた。しかしながら、金属触媒としては当機関で知見のある実験系ではあったものの、新たに錯体化学、および有機化学に関する知識を強く要請される研究テーマであり、当初は研究の進捗が芳しくなかった。 そこで、共同研究先である北海道大学理学研究院との綿密な打ち合わせを重ねることで、本研究の大きなターゲットである塩化アリールの温和な条件下での化学返還を可能とする材料の開発ができた。さらに、北陸先端大学と連携した実験計測により、錯体化学において全く新しい知見を、材料化学の立場から考察し得ることができた。この内容は、学術論文に投稿するため現在鋭意作成中である。 当初の多孔質材料をフロー操作に適用するため、カラム内で重合を試みた結果、圧力損失が高くなりすぎ、実用的でないことが示唆された。これは、材料の孔のサイズおよび空孔率が小さすぎるためであると判断し、新たな多孔質ポリスチレンの重合法を模索した。検討の結果、フロー操作の可能なポリスチレン-ホスフィン複合材料を含むカラムを得ることができた。これをSuzukiカップリング反応に適用することで、不活性な塩化アリールを温和な条件下で変換するフローシステムを構築することができた。
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Strategy for Future Research Activity |
新たな多孔質構造をもつポリスチレンーホスフィン複合材料を含むカラムを種々に作製し、より効率的に触媒反応を進行するシステムを構築する。具体的には、カラム長、カラム径、骨格スチレンモノマーの選定、流速、温度、および溶媒など多岐にわたるパラメータを検討していく。さらに反応物の物質移動の点に着目し、それを可視化できるようなシステムの構築も目指す。より効率的かつ実用性をもった材料作製のため、マイクロフローリアクターシステムの構築を行う。
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