2019 Fiscal Year Annual Research Report
制御された流路および反応場をもつ高分子ゲルの開発とフロー触媒合成プロセスへの応用
Project/Area Number |
18J20345
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
松本 光 九州大学, 工学府, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2018-04-25 – 2021-03-31
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Keywords | 多孔質材料 / ポリスチレン / トリフェニルホスフィン / パラジウム / 錯体 / Suzukiカップリング |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、医薬品等の触媒的合成に向けた固定化触媒の開発を目指している。戦略として、数マイクロメートルの孔をもつ高分子ゲルを触媒の固定化基材とし、これに班の液を連続的に流して有機合成を行うシステムの構築を目指す。 昨年度までに、パラジウム触媒を固定したオルガノゲルの多孔質化およびこれを用いた触媒的炭素-炭素結合を達成してきた。しかしながら、孔のサイズが数百ナノメートルと小さく、これに液を流す際の圧力上昇が無視できなかった。 今年度は、より大きな孔サイズを提供できる新たな材料作製手法に取り組み、反応液の連続流通が可能な装置設計を試みた。カラム式鋳型内での高分子の重合により、ポンプ等による連続的な液の流れを許容するリアクターの構築に成功した。 ゲルの重合条件および物性との相関に基づき、流速やサイズを設計し、持続可能なフローシステムを作製した。 作製したゲルから成るカラムリアクターは、金属触媒の固定化を可能とし、さらに漏出のないクリーンなフローシステムの構築が可能であることを示唆した。触媒としてパラジウム-ホスフィン錯体を固定したリアクターは、炭素-炭素結合をうまく触媒し、さらに従来の合成法より優れた活性を示した。カラムの長さおよび孔のサイズを種々にスクリーニングすることで、ゲルの孔の構造および液流れがリアクターの生産性に大きく影響することを見出した。さらに、高分子の特性分子レベルから制御することで、触媒の寿命および活性を著しく向上できる可能性も示した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
活性な金属触媒をもつゲルの作製、液の流れが許容できる多孔質構造の形成、およびフローシステムの構築を達成でき、研究の肝となる事項は達成できている。さらに、カラムの長さおよび固定された触媒の分子設計により、従来法より優れた触媒活性を発揮する、という学術的にも新規かつ重要な知見も見出した。今回達成できた触媒反応は、当該領域でも困難とみなされてきたクラスであり、これが実現できたことは化学的および工学的に重要である。また研究の進捗は逐次、共同研究先である北海道大学有機金属研究室と共有することで、化学工学だけでなく有機合成化学の観点からもインパクトの高い研究として推し進めることができている。 以上の成果は既に1件特許出願済みであり、学術論文2報としても発表する予定である。 また、他の国内外での学術会議でも発表し、有機化学および化学工学をつなぐ境界領域にある研究として反響を得てきている。
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Strategy for Future Research Activity |
これまで、金属触媒による一つのフローシステムのみを検討してきた。これらを連結した多段での物質変換システムの構築は、その可能性を模索する段階である。今年度の進捗状況を鑑みると、次年度でのこの目標達成よりも、むしろ現存のシステムの応用可能性を拡張することの方が先決かつ重要であると考えられる。そこで、次年度はこの類似の金属錯体を用いた他の触媒反応も検討し、このリアクターの反応適用範囲の拡張を検討していきたいと考えている。 それら反応の中で多段変換に組み込めるものが見つかれば、多段変換システムの実現を検討する。
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