2019 Fiscal Year Annual Research Report
熱放射光学顕微法および表面分光法による二次元物質CVD成長の素反応解析と最適化
Project/Area Number |
18J20348
|
Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
平良 隆信 東京大学, 理学系研究科, 特別研究員(DC1)
|
Project Period (FY) |
2018-04-25 – 2021-03-31
|
Keywords | グラフェン / 化学気相成長法 / 熱放射光学顕微法 / X線光電子分光法 / 放射光 / 水素 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は、熱放射光学顕微法(Rad-OM法)と放射光施設KEK-PF BL-13Bの高分解能XPSを組み合わせた装置を開発した。これにより、Rad-OM法でリアルタイム観察したCu箔基板上のグラフェン化学気相成長(CVD)過程の光学像と、XPS測定による表面化学種の情報との相関を評価し、また光学顕微鏡の検出下限(数μm)以下の量の炭素も評価できるようにした。この測定法を用いてグラフェンCVD成長における水素の効果を研究した。 装置について、XYZ並進、回転、傾斜用の光学ステージを導入し、Rad-OM法に用いるカメラの位置を精密制御できるようにした。これにより機材の設置に制約があるPFの装置でのCVD観察を可能にした。またCVD用ガスラインを事前に作り込むことで、時間が限られている放射光実験で迅速に装置を組めるようにした。 Rad-OM法による観察の結果、水素無しの条件のCVDでは不定形の炭素が大量発生した。また成長後のグラフェンを水素有り・無しの条件で加熱すると、両方の条件でグラフェンの縮小が起こり、縮小速度は水素有り条件時は無し条件時の約2.5倍であった。さらにRad-OM法とin-situ放射光XPSを組み合わせた測定において、光学像とXPSのC1sスペクトル両方の結果から、水素有りCVD後の方が水素無しCVD後よりも炭素量が少ないことが確認された。これらのCVD後の基板を水素中で加熱すると、基板上の炭素の大きさは光学検出下限以下になり、C1sスペクトルの強度が減少した。以上の結果は、水素が炭素を削る効果をもつことを示している。 グラフェンCVD成長では、原料ガスのメタンとともに水素を供給した方が高品質なグラフェンを得られるが、その機構については未解明であった。本成果は、グラフェンCVD成長過程における水素の効果の機構と、成長条件最適化の指針を示す意義がある。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
Rad-OM法に用いるカメラの位置を精密に制御できるようにし、CVDのガスラインを改造したことにより、放射光施設KEK-PF BL-13BにてRad-OM法と高分解能XPSを組み合わせた装置の開発に成功した。これにより、Rad-OM法でリアルタイム観察したCu箔基板上のグラフェンCVD過程の光学像と、XPS測定による表面化学種の情報の両方からCVD成長過程を解析できるようになった。 この測定法により、グラフェンCVD成長においてメタンとともに供給する水素は、グラフェンをエッチングする効果があることを明らかにした。
|
Strategy for Future Research Activity |
今後は、これまでに得られたグラフェンCVD成長における水素の効果についてのデータをより詳細に解析する。Rad-OM法により取得した光学像から、グラフェンの形状、核密度、成長速度などの統計をとる。放射光XPSのスペクトルからは、生成した炭素の他、基板の酸化状態などについても解析する。また必要に応じて追加実験を行う。これらの成果をとりまとめ、論文として発表する。 次の課題として、水素が不定形炭素を削る効果があるという知見にもとづき、グラフェンCVD成長手法の改善に取り組む。
|
Research Products
(2 results)