2019 Fiscal Year Annual Research Report
原始惑星系円盤における多重リング構造と微惑星形成機構の統一的解明
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18J20360
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
冨永 遼佑 名古屋大学, 理学研究科, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2018-04-25 – 2021-03-31
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Keywords | 原始惑星系円盤 / 微惑星 / 惑星形成 / ダスト / 多重リング構造 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では,惑星の形成現場である原始惑星系円盤の動力学に注目し,近年数多くの天体で観測されている多重のリング・ギャップ構造の起源と,惑星形成に必要不可欠な微惑星の形成過程を統一的に解明しようとする研究である. 本年度は,動径方向1次元の数値シミュレーションを行い,永年重力不安定性と前年度に発見したTwo-component Viscous Gravitational Instability(TVGI)の非線形成長をまず調べた.その結果,最終的にダストの密度を10倍以上大きくすることがわかった.そのような高密度領域では,加速されたダスト成長と重くなったダストリングの自己重力的分裂によって微惑星形成に発展するという示唆を得た. また,これまでの解析では考慮されていなかった,「ダストが中心星に向かって落下(ドリフト)する」という効果を取り入れるため,動径方向に広い計算領域を設定した大局的な円盤進化シミュレーションを行った.その結果,永年重力不安定性はダストのドリフトが起こる状況でも成長し,ダストを集積することがわかった.つまり円盤で永年重力不安定性が成長すれば,ドリフトによりダストが枯渇する前に集積し,微惑星形成に発展させる事ができる. 永年重力不安定性の大局的シミュレーションにより,その非線形成長の結果円盤内に鋭い複数のダストリングが形成される事がわかった.こういった領域でダストが成長しやすくなる事を鑑みると,鋭い複数のダストリングはむしろ1つの大きなギャップとして観測され得るという事がわかった.またガス円盤には顕著なリング・ギャップ構造を作らないこともわかった.つまり,特に赤道面付近でのガス円盤の観測によって,観測されているダストリング構造の形成機構を判別できる可能性があると言える.上記の成果は論文としてまとめThe Astrophysical Journalで査読中である.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の研究計画では,輻射輸送過程を考慮した円盤のシミュレーションを行う予定であった.しかし前年度の研究過程で,従来多くの研究で用いられてきたダスト拡散のモデル化に理論的欠陥がある事がわかったため,輻射輸送過程を組み込む前に「ダスト-ガス系の動力学」を理論的に整備し,適切な方程式系のもとで不安定性の解析・シミュレーションを行っているというのが現段階の進捗状況である.ダストの密度分布は原始惑星系円盤内での輻射輸送過程に直接関わるが,それはダスト-ガス系の動力学によって時間発展する.例えば,本年度で明らかにしたように,永年重力不安定性やTVGIによるリング形成によってダストの分布が大きく変わる.ダストが濃集したリング内ではダスト成長だけでなく衝突破壊過程も起こり得るであろう.その過程で生成される小さいダストは円盤の輻射過程に直接寄与する.また本年度は大局的なシミュレーションも行い,ダスト円盤が不安定性によってどのように時間発展するかも明らかにした.ここで得た知見は輻射輸送過程やそれによる温度構造の進化を議論する上で重要になり得る.従って,当初の研究計画と比べるとやや遅れているものの,本研究課題は概ね順調に進展していると言える.
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Strategy for Future Research Activity |
現段階でのシミュレーションではダスト成長過程を考慮していなかった.今後はダスト成長過程も考慮した永年重力不安定性の大局的シミュレーションを行う.ダスト成長過程は単一サイズ近似を施した方程式をもとに記述する.数値計算コードへの実装はすでに完了している.永年重力不安定性とダスト成長過程を同時に考える上で,鉛直方向の構造が重要になる.具体的には,「不安定性によって鉛直方向に広がったダスト・ガスをどの範囲まで集める事ができるか」が重要になる.不安定性によるダスト濃集度がわかれば,それに基づいたダスト成長効率を決める評価する事ができる.そこで鉛直構造を考慮した永年重力不安定性の線形解析を行い,その影響を調べる.以上の研究が進み次第,非軸対称シミュレーションを行い,リングの分裂過程や非軸対称モードの時間発展を議論する.
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Research Products
(10 results)