2019 Fiscal Year Annual Research Report
窒化ガリウムおよびその混晶の異種界面制御と高電子移動度トランジスタへの応用
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18J20386
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
金木 奨太 北海道大学, 大学院情報科学研究科, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2018-04-25 – 2021-03-31
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Keywords | 窒化ガリウム / 界面準位 / MOS / HEMT |
Outline of Annual Research Achievements |
第5世代無線通信システムの実現にあたり、基地局間の無線通信における通信デバイスとしてGaN系材料を用いた高電子移動度トランジスタ(HEMT)が有望視されており、すでに実用化に至っているSchottkyゲートHEMTから更に大出力化を目指すにあたり、絶縁ゲート構造による入力電圧範囲の拡大が期待されている。しかし、これらのHEMT構造はSiC基板上にエピタキシャル成長されたものが殆どであり、109 cm-2以上の高い転位密度を有しているといった問題がある。そこで本年度は、転位密度が106 cm-2台の高品質なGaN自立基板上にAlGaN/GaNヘテロ構造をエピタキシャル成長した試料を用いて絶縁ゲートHEMTを作製し、GaN自立基板の優位性を示す電流-電圧特性を得た。また、C-V法によりPost Metallization Annealing(PMA)を用いることで絶縁ゲートHEMTにおいても絶縁膜/半導体界面の電子捕獲準位密度の低減効果が存在することを明らかにした。 また、昨年度の報告書においてc面GaN上に作製したデバイスでは焦電効果によって自発分極が温度依存性を示すことから界面準位の有無にかかわらず温度的に不安定である点について、m面GaN MOSダイオードとの比較によって指摘した。上記の内容について、論文執筆にあたり、焦電効果のメカニズムについて定性的な理解に向けた文献調査を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
高品質GaN自立基板上に作製したAlGaN/GaN絶縁ゲート高電子移動度トランジスタ(MOS-HEMT)において、高い結晶品質による顕著な優位性が見られた。Subthreshold Slope(SS)がAs-depo試料においても75mV/decと低い数値を示し、PMAを行うことで63mV/decまでの低減を確認した。同様のプロセスで作製したSiC基板上MOS-HEMTでは100mV程度であったため結晶品質向上が寄与しているものと考えられる。また、OFF時リーク電流の大幅な低減も確認された。自立基板では結晶成長の際にバッファ層を必要としないことから、バッファ層を介したドレインリークが減少したためと考えられる。以上より、MOS-HEMTにおいても結晶品質がデバイス性能へ与える影響は顕著なものであることが明らかになった。 昨年度の推進方策で述べていた、m面GaNにおいてSchottky障壁高さがc面GaNと異なる点について、Neugebauerらによるとm面GaN表面ではGa-Nダイマーの形成エネルギーが最も小さいことを計算より明らかにしており、N由来の占有準位がEv近傍にGa由来の非占有準位がEc近傍に存在していると述べられている。HimmerlichらによってこのダイマーがEv近傍に表面準位を形成することがUPSによって実験的に明らかにされている。m面GaNではc面GaNと比較してSchottky障壁高さが低く報告されているものが殆どであるが、表面に形成されたGa-Nダイマーが解消されていないことが原因の一つである可能性が考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
前年度では、転位密度が106 cm-2台の高品質なGaN自立基板上にAlGaN/GaNヘテロ構造をエピタキシャル成長した試料を用いて絶縁ゲートHEMTを作製し、GaN自立基板の優位性を示す電流-電圧特性を得た。また、C-V法によりPost Metallization Annealing(PMA)を用いることで絶縁ゲートHEMTにおいても絶縁膜/半導体界面の電子捕獲準位密度の低減効果が存在することを明らかにした。 一方で、絶縁ゲートHEMTでは、ゲート-ソース間およびゲート-ドレイン間に電極が形成されていない領域(アクセス領域)が存在する。上で述べたPMAとは、電極形成後に低温でアニール処理を行うことで界面準位密度の低減を図るものである。つまり、アクセス領域ではPMAによる界面準位密度の低減効果が表れていないと考えるのが妥当である。そこで、絶縁ゲートHEMT作成後に、さらに薄い絶縁層を形成し、HEMTのアクセス領域を含むチャネル部全体に金属を蒸着した後にPMA処理を施すMetal Laminate PMA(ML-PMA)によって、アクセス領域の界面準位が絶縁ゲートHEMTに及ぼす影響を調べる。また、絶縁ゲートHEMTの電気特性が、同時に作製したHEMT構造MOSダイオードのC-V特性との相関が取れないといった問題も見られており、アクセス領域の界面準位密度を低減することで、MOSダイオードのC-V特性で得られているような良好な電流-電圧特性が得られることが期待される。
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