2018 Fiscal Year Annual Research Report
外部刺激応答性DNAアプタマーの抗がん剤展開と発がんタンパク質結晶化への応用
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18J20422
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Research Institution | Niigata University |
Principal Investigator |
金子 敦巳 新潟大学, 自然科学研究科, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2018-04-25 – 2021-03-31
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Keywords | アプタマー / PPM1Dホスファターゼ / G-quadruplex DNA / 刺激応答性阻害剤 |
Outline of Annual Research Achievements |
平成30年度は発がんタンパク質PPM1Dに対する特異的阻害剤として当研究室で同定しているイオン応答性DNAアプタマー(IRDAptamer)の化学的性質基盤の解明を行った。イオン応答性DNAアプタマーとは、イオン濃度に応答し構造がG-quadruplex構造に変化し、標的への特異的な結合を示す一本鎖DNAである。 まず、アプタマーのイオン応答性をCDスペクトルにより測定し、構造変化におけるイオン濃度の閾値を解析した。その結果、カリウムイオン存在下とナトリウムイオン存在下で生体内のイオン濃度レンジである5-140 mMの範囲で構造がダイナミックに変化することが明らかとなったため、本アプタマーが生体内でイオン濃度変化に応答しPPM1Dの活性を制御できる阻害剤である可能性が示唆された。 次にこれまで同定したアプタマーの低分子量化を実施した。構造活性相関解析により全長80塩基のDNAからなるアプタマーの構造をもとに、全長50塩基でさらに強力なPPM1D阻害効果を持つアプタマーの同定に成功した。CDスペクトル解析の結果、低分子量化を行ったアプタマーに関してもイオン応答性を維持していることが明らかとなったため、より低分子量かつイオン応答性を維持したPPM1D標的IRDAptamerの同定に至った。 また、新たに細胞内での機能制御やPPM1Dの結晶化剤として使用可能なアプタマー候補を探索するために、これまで同定していたナトリウムイオン依存的にPPM1Dを阻害するアプタマーとは逆の作用を示すカリウムイオン依存的にPPM1Dに結合新規IRDAptamerの探索と機能解析を行った。その結果カリウムイオン依存的にPPM1Dを特異的に阻害する新規アプタマーを2種類同定することに成功した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の計画どおり、アプタマーの化学的構造基盤の解明を行うことができ、外部刺激を用いた生体内におけるアプタマーの制御法の確立やPPM1Dの結晶構造解明への展開につながる結果を得ることができた。また、学会での研究成果発表も行っている。
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Strategy for Future Research Activity |
今後の研究の推進方策としては、これまで同定したイオン応答性アプタマーを機能性抗がん剤、およびPPM1D結晶化剤へと展開する。 機能性抗がん剤への展開としては、細胞内制御法ならびに細胞内導入法の開発を行う。細胞内制御法の開発においては、細胞内のイオン濃度を変化させる物質とアプタマーのがん細胞への併用投与を行い、細胞内におけるアプタマーの機能を外部刺激により制御する系を確立する。また、光応答性分子をアプタマーに修飾し光によりアプタマーの機能を制御する系を確立する。細胞内導入法の開発においては、細胞膜透過ペプチドとアプタマーを融合させた細胞導入型アプタマーを作製し、細胞導入効率と細胞への毒性、PPM1Dに対する阻害効果の相関を解析する。これらにより副作用の少ないがん治療の開発ならびにアプタマー医薬の細胞内導入効率の向上を目指す。 PPM1D結晶化剤への展開としては、アプタマーのPPM1Dに対する高親和性を活かし、PPM1Dの構造安定化剤として使用し、PPM1Dの結晶構造解明を行う。
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Research Products
(7 results)