2019 Fiscal Year Annual Research Report
ゲノム編集による養殖有用系統作出の効率化に向けた技術展開研究
Project/Area Number |
18J20434
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
岩泉 雅樹 東北大学, 農学研究科, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2018-04-25 – 2021-03-31
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Keywords | CRISPR/Cas9 / GFP-luc / 卵母細胞 / 受精卵 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、養殖魚でのゲノム編集を効率的に行うために、卵巣への注射で卵母細胞および受精卵をゲノム編集する方法を開発することを目的としている。 初年度に、ビテロジェニン受容体結合配列(Vg)を付加したペプチドやGFPがゼブラフィッシュの卵母細胞に取り込まれることを確認していた。本年度は、Vgを付加していないペプチドやGFPを合成した。それらを、ゼブラフィッシュの卵巣に注射したところ、卵母細胞に取り込まれることが分かった。 また、GFPとルシフェラーゼの融合タンパク質(GFP-luc)をゼブラフィッシュの卵巣に注射したころ、卵母細胞に取り込まれて受精卵の卵黄に移行した。受精卵のルシフェラーゼ活性は、4 dpfまで持続していた。Cas9とルシフェラーゼの融合タンパク質(Cas9-luc)も同様に受精卵に導入できている。さらに、tyrosinaseを標的としたcrRNAとATTO 550 で標識したtracr RNAとCas9 protein の複合体(RNP)をゼブラフィッシュの卵巣に注射したころ、卵母細胞および受精卵の卵黄で蛍光を確認できた。 これらの結果から、ゼブラフィッシュの卵母細胞は、タンパク質を非特異的に取り込むということが示唆された。RNPを導入したゼブラフィッシュから得た受精卵を用いて、Heteroduplex Mobility Assay(HMA)を行ったが変異導入は確認できなかった。現在、GFP-lucおよびRNPはいずれも卵黄でのみ蛍光が検出されている。ゲノム編集を行うためには、受精卵の細胞質にRNPを導入する必要がある。今後、クロロキンなどのエンドソーム破壊作用のある物質を用いて、RNPを細胞質に導入する方法を検討していく。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
卵母細胞へ導入できる物質を調べるために、GFP、GFP-luc、Cas9-lucを、大腸菌を用いて合成した。GFP-luc やCas9-luc、crRNAとtracrRNAの複合体 (gRNA)、RNP、蛍光標識した33 b のDNAなどをゼブラフィッシュの卵巣に注射したところ、受精卵に導入できた。ゼブラフィッシュの卵母細胞は、DNAやRNA、タンパク質を非特異的に取り込むということがわかった。この結果は、卵母細胞や受精卵でゲノム編集を行う上で重要なデータである。RNPを導入した個体から得た受精卵を観察したが、色素欠損は確認できず、HMAにおいても変異導入を確認できなかった。さらに、メダカにGFP-lucを注射したところ、ゼブラフィッシュと同様に受精卵の卵黄において蛍光が確認できた。また、受精卵からルシフェラーゼ活性も検出できた。ゼブラフィッシュだけでなくメダカの卵母細胞にもタンパク質を導入できたことは、さまざまな魚種への応用が期待できる。
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Strategy for Future Research Activity |
現在、受精卵に導入できた物質はいずれも卵黄でのみ蛍光が確認できている。ゲノム編集を行うためには、RNPを受精卵の細胞質に導入する必要がある。RNPを注射した雌から得た受精卵をクロロキンやエンドソーム破壊ペプチドに浸漬する方法や、光増感剤を使用してエンドソームを破壊する方法を検討していく。クロロキン、エンドソーム破壊ペプチド、光増感剤などの最適な使用量を実験で決定していく。RNPの細胞質への移動は、ATTO550の蛍光で判定する。また、メダカにおいてもゼブラフィッシュと同様に受精卵にDNA、RNA、タンパク質などを導入できるか試験していく。さらに、メダカのtyrosinaseを標的としたRNPを作製して、ゼブラフィッシュと同様に卵巣への注射で受精卵に導入できるか試験していく。変異の導入の判定は、HMAおよびDNAシーケンスで行う。 その後、海産魚のササウシノシタにおいても卵巣への注射でゲノム編集が可能か試験していく。
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