2019 Fiscal Year Annual Research Report
水玉模様のサイズはどのように決まるのか?ゲノム編集を用いた発生遺伝学的アプローチ
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18J20452
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
福冨 雄一 北海道大学, 環境科学院, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2018-04-25 – 2021-03-31
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Keywords | RNA-seq / 模様 / ゲノム編集 |
Outline of Annual Research Achievements |
模様形成メカニズムを解明すると動物の模様の多様なパターンがどのように進化してきたのかを説明できるのではないだろうか。そのメカニズムとしてモルフォゲン(発生の際に拡散によって体のパターンを形成する因子)によって模様のパターンが形成されることが想定されてきた。拡散しうる模様形成因子としてミズタマショウジョウバエで初めてモルフォゲンであるWinglessが同定され(Werner et al. 2010 Nature)、水玉模様のサイズはWinglessの長距離の拡散によって決まると想定された。しかし、全く拡散しないWinglessをコードする遺伝子をもち、野生型のwingless遺伝子をゲノム中に持たないキイロショウジョウバエの翅のパターンが正常だった(Alexandre et al. 2014 Nature)ことから、Winglessの長距離の拡散によるパターン形成の存在自体が疑問視され始めた。では、本当のところは水玉模様のサイズはどのように決定されているのだろうか。本研究ではこの問いの解決をゴールとしている。その過程として、模様の形成に関与する、winglessの下流の因子の同定が必要である。 今年度は、トランスクリプトーム解析を行い、模様のパターン状に発現し、さらに、winglessの下流にある遺伝子を絞り込むことに成功した。これらの遺伝子の中に転写因子やシグナル伝達に関与するものが検出された。具体的には、神経発生に関与する転写因子群やWntシグナル、Dppシグナルに関与する遺伝子群である。これまでに得られた結果を、プレプリントサーバーであるbioRxivに投稿した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究は、ミズタマショウジョウバエの翅の水玉模様のサイズがどのように決まるのかということを、winglessの下流の因子の発現範囲解析とWinglessタンパク質の細胞膜係留実験の2つを組み合わせて解き明かそうとしている。2年目までの成果として、winglessの下流の因子を同定したにとどまっている。しかし、Winglessタンパク質の細胞膜係留実験については、それに必要な、ミズタマショウジョウバエに導入するためのプラスミドが完成している。以上の理由を踏まえて残りの1年でゴールにたどり着く計画を考えた結果、現在までの進捗状況としておおむね順調に進展していると考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
2020年度では、NRT-Wg遺伝子を持つ系統の作成を中心に行う。NRT-Wgとは、wingless遺伝子の配列にNeurotactin遺伝子の配列を結合させ人工の遺伝子である。この遺伝子では、wingless遺伝子が持つ細胞外に分泌させるシグナルがコードされている部分が削られており、その代わりにNeeurotactin遺伝子のもつ細胞膜に局在させるシグナルがある。そのため、NRT-Wg遺伝子の産物は細胞外に分泌されずに細胞膜に係留される。2020年度は、CRISPR-Cas9システムによるゲノム編集を用いて野生型のwingless遺伝子がノックアウトされ、ゲノム中にNRT-Wg遺伝子のみを持つ個体を作成する。この個体でwinglessの下流の因子の発現範囲の解析も行う。
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Research Products
(5 results)