2019 Fiscal Year Annual Research Report
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18J20466
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Research Institution | Chiba University |
Principal Investigator |
角田 有 千葉大学, 融合理工学府, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2018-04-25 – 2021-03-31
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Keywords | 確率的組合せ論 / 集中不等式 / グループテスト / X符号 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、確率的組合せ論と呼ばれる数学を用いて、X符号をはじめとする種々の組合せ構造を理論的に明らかにすることを目的としている。X符号とは元来、大規模集積回路のテスト工程の容易化に用いられる情報圧縮技術を数学的に行列の形で抽象化したものであるが、前年度は、X符号によりどこまで情報圧縮可能であるかの解析のため、確率的組合せ論を用いてX符号の圧縮比に関する限界式を導出した。本年度は、前年度までの研究で得られた結果を、X符号とよく似た組合せ構造に関する研究へと繋げることができた。 当初の計画では、本年度はX符号の誤り訂正符号理論への応用について調査し、それと並行して確率的組合せ論の他の組合せ構造への応用可能性を検討する予定であったが、X符号は、DNA解析などのグループテストで用いられる disjunct 行列の自然な一般化とみることができ、この類似性に着目することで、X符号に関する理論限界を導出した際に用いた確率的証明を、disjunct 行列へ応用することができたため、この研究方向性で一定の成果が得られると判断し、研究を進めた。その結果、disjunct 行列のうち実用上の要請から望ましい条件を満たすものや、特殊なグループテストにおいて必要となる条件を満たすものに関する限界式を導出することができた。これらの結果は、グループテストにかかるコストをどこまで下げられるのかという限界に関わる意義深いものである。 さらに、X符号の研究で用いた手法をそのまま適用することが難しい局面においては、集中不等式を用いた新しい証明技法も併用したのだが、この証明手法をX符号の問題へ還元することで、X符号に関する新たな理論構築が可能であると見込んでいる。 また、誤り訂正符号の訂正能力や信頼性について調査している中で、期せずして有限幾何学を用いた誤り訂正の仕組みについても興味深い結果が得られた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
上述の研究実績の概要に記載したように、当初計画していた本年度の研究実施計画通りではないものの、確率的組合せ論を用いて disjunct 行列などの組合せ構造において研究成果が得られており、各研究成果について国際研究集会で口頭発表を行っている。またX符号に関して得られた研究成果についても、情報理論分野における最大規模の国際会議において口頭発表を行っている。 また前項で記載の通り、次年度の研究に繋がる研究成果を得られているため、本研究はおおむね順調に進展していると判断する。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでの研究において、シンプルながら強力な確率的証明手法や、確率的組合せ論においてよく知られた補題である Lovasz Local Lemma や前述の確率集中不等式を用いた証明手法を用いて、X符号やその類似の組合せ構造についての限界式の導出や改良に取り組んだ。また、確率的証明の脱乱択化をし、導出した限界式を満たす組合せ構造の構成アルゴリズムも考案した。 今後の研究においては、これらの結果を他の類似の組合せ構造への研究に還元する。具体的には、無線通信ネットワークやセンサーネットワークにおいて通信の信頼性やネットワークの耐久性を維持するのに重要な役割を果たす、センサーの配置問題でのグラフ理論的考察に取り組む計画である。
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Research Products
(7 results)