2019 Fiscal Year Annual Research Report
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18J20494
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
足利 沙希子 京都大学, 理学研究科, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2018-04-25 – 2021-03-31
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Keywords | ハドロン物理学 / 電子対測定 |
Outline of Annual Research Achievements |
2020年に予定されている本実験に向けた検出器の製作・設置及びオペレーションシステムの構築を行った。本研究では、電子・陽電子対測定によって、有限密度下でのハドロン質量変化を実験的に検証する。スペクトロメータにおいて申請者は電子・陽電子対を識別するための鉛ガラス検出器を担当した。本検出器について実機の量産を行い、スペクトロメータの方位角15°-105°、仰角±15°を覆う事を可能にした。これは約25%のアクセプタンスに相当する。また、スペクトロメータへの検出器の組み込みを行い(写真1)、検出器の磁場耐性に関するテストを行った。テストの結果、スペクトロメータ内の実際の磁場下においても問題なく動作することが確認された。さらに、本実験で使用する飛跡検出器であるGEM Trackerに関しても実機の製作・設置を行い、スペクトロメータを完成させた。 また、スペクトロメータ電磁石の特性上、カロリメータの設置位置によって検出器自体が感じる磁場は0.4T~0.2Tの範囲でばらつきがある。カロリメータ磁場耐性について試験を行い、本実験で使用するスペクトロメータを励磁することで、データ取得時と同じ状態で光電子増倍管の増幅率がどのように変わるかを詳細に調べた。これにより、実際に想定される1400V前後の印加電圧においても十分な増幅率がえられることが確認された。 本実験で使用するGEM Trackerに関しては、設置後、写真測量技術を使用した検出器位置の測量を行った。これによって0.1mmの精度で複雑な形状の検出器の位置やたわみの状態を把握することができ、0.1mmの飛跡位置検出精度を保つことを容易にする。これによって5MeVを目標とスペクトロメータ全体の運動量分解能全体の向上に貢献する。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当該年度は本実験に向けた、スペクトロメータの建設とデータ取得、検出器のオペレーションシステムの構築行った。申請者はJ-PARCハドロン実験施設に新設される高運動量ビームラインにおいて、レプトン対を用いたハドロン質量スペクトル測定研究に携わっている。申請者は自身が担当する鉛ガラスカロリメータの実機製作を昨年度に引き続き行い、4モジュールを新規製作した。カロリメータ実機の製作後、設置作業を行った。昨年度製作した2モジュールと合わせた合計6モジュールを設置することにより、スペクトロメータ内において方位角15°-105°、仰角±15°の角度を覆うことを可能にした。 さらに総計230chの光電子増倍管の印加電圧の同時設定・調整・監視を目的とした高電圧電源との通信システムを構築し、グラフィカルユーザインターフェースを製作した。これにより鉛ガラスカロリメータ全体のオペレーションシステムを完成させた。 また、本実験で使用する飛跡検出器であるGEM Tracker実機の組み立てを行い、スペクトロメータ内へ設置した後、写真測量技術を使用した検出器位置の測量を行った。これによって0.1mmの精度で複雑な形状の検出器の位置やたわみの状態を把握することができ、0.1mmの飛跡位置検出精度を保つことを容易にする。これによって5MeVを目標としたスペクトロメータ全体の運動量分解能全体の向上に貢献する。 以上の検出器作成により本実験用のスペクトロメータを完成させた。
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Strategy for Future Research Activity |
2020年度にビームを利用した本実験のスペクトロメータの性能評価および物理データの取得を行う。スペクトロメータは昨年度末に完成させており、実 験で使用する新規のビームラインである高運動量ビームラインもすでに完成している。本研究および新規ビームラインにとって本年度が初のビ ームタイムである。申請者は実験施設の研究員・職員と協力してビームの時間・空間的な構造を本実験に最適化する。 その後に申請者が現在まで担当してきた鉛ガラスカロリメータの校正を総計230チャンネルに対して行う。本実験においては、10 Hzという高強度ビームを使用するため、カロリメータの信号に歪みや重なりが生じると考えられる。申請者はカロリメータの信号を波形データとして読み出し、処理を行う。申請者は本実験におけるデータ取得および保存のシステムを構築する。また、データ取得のためのソフトウェアの開発を行い、信号処理およびディスク書き込 み速度を高速化することにより高強度のビームを使用したデータ取得を実現させる。 データ取得後、スペクトロメータ全体の電子識別能力と質量分解能に関して性能評価を行い、ベクター中間子の生成断面積や原子核内でのス ペクトル変化を評価する。特に電子識別能力に関しては電子の検出効率とバックグランドであるパイ中間子の棄却率の双方の観点から評価を行 う。 結果は国内および国際会議において積極的に発表するとともに投稿論文にまとめるとともに、博士の学位を取得する。
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Research Products
(10 results)