2019 Fiscal Year Annual Research Report
The study on soil and root growth characteristics for the regeneration of Tohoku region coastal forests
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18J20542
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
藤田 早紀 東京大学, 農学生命科学研究科, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2018-04-25 – 2021-03-31
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Keywords | 海岸林 / クロマツ / 滞水応答 / 細根成長 / 蒸散 |
Outline of Annual Research Achievements |
2011年の東日本大震災の津波被害によって東北地方太平洋沿いの海岸林が甚大な被害にあった。現在、被災海岸林の再生現場では、根系が十分に発達できるよう高さ約2 mの盛り土を植栽基盤とし、クロマツを中心とした植栽作業が進められている。しかし、一部の造成地では、重機の走行や締め固めにより、土壌が硬化し、表土層の排水性や透水性の低下に起因した降雨後の滞水環境の発生している。クロマツは滞水に対して耐性が低いことが示唆されているため、滞水がクロマツ苗の生育に及ぼす影響が懸念されている。一部の造成地では滞水環境の改善策として、植栽前の耕作や明渠の造成が試行されている。そこで、クロマツ苗がが生育または回復可能な滞水条件を明らかにすることが求められている。 本研究では、滞水強度を水位とし、海岸林の主要樹種であるクロマツを対象に、2つの水位を設定した苗木試験を実施した。特に細根成長の垂直分布と蒸散に着目して調査を行った。その結果、クロマツ苗は根系の下部のみ滞水に晒されている場合(部分滞水)、滞水していない根系上部で細根成長を盛んに行っていた。さらには、滞水開始から4週間には対照区に比べ有意に低下していた蒸散は、滞水開始後8週間には対照区と差異ない値まで回復していた。これらのことからクロマツ苗は、細根成長の垂直分布を変化させ、滞水のダメージを受けた細根を新たな細根成長で補うことによって、部分的な滞水環境であっても生育を維持することができることが明らかになった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
滞水強度を水位として設定し、部分的な滞水環境下ではクロマツは細根成長の垂直分布を変化することで滞水に対して順応することができることを明らかにした。これは、東北地方の被災海岸林の再生現場において、耕作や明渠の造成の有効性をクロマツの細根応答の観点から示す重要な知見である。
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Strategy for Future Research Activity |
滞水強度を滞水期間とし、滞水期間の長さがクロマツ苗に及ぼす影響を評価する。さらに、滞水処理期間後に滞水解除期間を設け、滞水期間の長さが滞水解除後の回復に及ぼす影響を明らかにする。
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