2019 Fiscal Year Annual Research Report
骨肉腫は3つの転写因子の機能的連動によって発症する
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18J20543
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Research Institution | Nagasaki University |
Principal Investigator |
伊達 悠貴 長崎大学, 医歯薬学総合研究科(歯学系), 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2018-04-25 – 2021-03-31
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Keywords | c-Myc / Runx3 |
Outline of Annual Research Achievements |
骨肉腫は間葉系細胞由来の悪性腫瘍で、代表的な小児がんのひとつである。発症の機序は、代表的ながん抑制遺伝子p53の遺伝子異常以外はほとんど分かっておらず、治療には四肢などの切除を余儀なくされることが多い。骨肉腫発症の分子機構の解明と、代替治療法の開発が急務である。 骨肉腫発症のモデル動物としては、p53を骨芽細胞で特異的に欠損する「OS(Osx-Cre;p53F/F)マウス」が確立されている。OSマウスを精査することで、ヒト骨 肉腫の発症・進展に関わる分子基盤を解明できると考えられた。これまでの解析から、骨肉腫発症の分子基盤が、3つの転写因子の機能的連動――すなわち、p53の遺伝子異常にともない、Runx3がその発現量を増加させ、代表的ながん遺伝子c-Mycを誘導する――であることを突き止めた。さらには、Runx3がMycを誘導する特異的なゲノムDNA配列mR1を特定し、mR1が骨肉腫の斬新な治療標的になることをマウス生体レベルで示した。 p53の破綻に起因して発症する腫瘍は骨肉腫のほかにも多く、全身性p53ノックアウトマウスは、とりわけ血液腫瘍のひとつである胸腺リンパ腫を好発する。そこで本研究では、ひきつづき骨肉腫発症の機序を証明していくとともに、この骨肉腫発症の機序が、同じくp53の遺伝子異常をきっかけに発症する胸腺リンパ腫にも通底するのか、胸腺リンパ腫のモデルマウスを導入してあわせて検証していく。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
ヒト骨肉腫の公共RNA-seqおよびOSマウス骨肉腫のRNA-seqを網羅的に解析したところ、骨肉腫発症に伴って発現量が顕著に増加する転写因子としてRunx3が特定できたことから、骨肉腫発症におけるがん遺伝子としてのRunx3の特異性が包括的に示せた。また、新たに導入した胸腺リンパ腫モデルマウスにおいては、その発症過程において、Runx1によるmR1を介したMycの誘導が必須であることが、マウス生体レベルで示唆されている。 これらの実験結果が、当初の計画(想定)よりも短い期間で得られている。
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Strategy for Future Research Activity |
骨肉腫発症の分子基盤が「Runx3によるmR1を介したMycの誘導である」という一連の研究成果は、今年度中に公表する予定である。 また、胸腺リンパ腫発症の分子基盤が「Runx1によるmR1を介したMycの誘導」であることも明らかになりつつあり、今後も遺伝子改変マウスを用いた飼育実験および生化学実験によって、さらなる検証を進めていく。
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