2018 Fiscal Year Annual Research Report
数値シミュレーションと観測の比較による、ブラックホールと星の潮汐破壊現象の研究
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18J20547
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
川名 好史朗 東京大学, 理学系研究科, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2018-04-25 – 2021-03-31
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Keywords | 超新星爆発 / シミュレーション / 原子核反応 / ブラックホール / 白色矮星 / 輻射輸送 |
Outline of Annual Research Achievements |
星がブラックホールの極めて近傍を通過すると、ブラックホールの極めて強い重力 (潮汐力) によって星が破壊される。これを潮汐破壊現象といい、破壊された星がブラックホールに降着することで明るく輝く突発天体となる。本研究の目的は、この現象の観測兆候の多様性や発生頻度を理論的に予測して観測と比較する事により、潮汐破壊現象ブラックホールの形成・成長過程やブラックホール近傍の強い重力場における物理過程を解明することである。 本年度は、白色矮星が破壊される潮汐破壊現象における観測兆候に関して、シミュレーションを用いて研究した。この現象においては、破壊される白色矮星が強い圧縮・加熱によって爆発的原子核反応を起こすという特徴がある。まず、白色矮星やブラックホールの質量、軌道要素といったパラメータに対する、原子核反応及び流体の振舞いの依存性・多様性を流体シミュレーションによって解明した。さらに、より長期間に渡る流体シミュレーションを行った上で、詳細な元素合成計算を行って、破壊される白色矮星内部に生成される原子核の組成・分布を見積もった。その後、原子核崩壊で発生する輻射の伝搬を解くことで、観測兆候を解明した。これにより、ヘリウムを主として構成される白色矮星が破壊される場合には、これまで想定されていなかった、短期間で輝く突発天体となることを明らかにした。 また、連星白色矮星系における合体後に残る、高速で自転する白色矮星の分布の理論予測と、その検出可能性に関する研究を行った。この種の白色矮星の発見は、連星白色矮星系の合体後の進化を解明する鍵になるという重要性を持つ。この研究は当初の計画にはなかったが、上記の研究で培った白色矮星のモデルを利用して進展した研究である。研究結果として、2019年度に完成予定の観測装置Tomo-e Gozenを用いることで、この種の白色矮星を約50個発見できることを示した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は当初の計画で予定していた、白色矮星の流体シミュレーション、輻射輸送計算を実行し、観測兆候の理論予測を与える事ができたという点で、進展が認められる。一方で、当初計画していた主系列星や初代星の潮汐破壊現象の研究は行えなかった。この原因は、当初計画にはなかった詳細な元素合成計算コードの実装・実行を必要が生じたためである。なぜ必要かといえば、輻射輸送計算を行うにあたり、流体シミュレーションに組み込んだ単純化された元素合成計算では原子核組成の情報が不十分であることが判明したためである。 こうした問題はあったものの、白色矮星の潮汐破壊現象における観測兆候の解明に成功し、また当初計画になかった高速で自転する白色矮星の検出可能性の研究を進めたことを鑑みると、本研究はおおむね順調に進展していると認められる。
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Strategy for Future Research Activity |
まず、白色矮星の潮汐破壊現象における原子核反応に由来する観測兆候に関して、結果を更に解析して論文にまとめる。さらに、探索するパラメータ範囲を広げ、その多様性についても解明する。また、潮汐破壊現象の発生頻度について、N体シミュレーションを用いて明らかにし、最新及び計画中の突発天体探査による潮汐破壊現象の検出頻度を解明する。
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Research Products
(9 results)