2018 Fiscal Year Annual Research Report
ユークライト隕石の母岩推定-統計手法からのアプローチ-
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18J20563
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Research Institution | The Graduate University for Advanced Studies |
Principal Investigator |
金丸 礼 総合研究大学院大学, 複合科学研究科, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2018-04-25 – 2021-03-31
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Keywords | ユークライト隕石 / 小惑星ベスタ / 統計的分類 |
Outline of Annual Research Achievements |
現在、小惑星ベスタを起源とするユークライト隕石の研究を進めている。本年度は、南極産・非南極産ユークライト隕石の(1)岩石学的記載、(2)X線回折実験による衝撃変成強度のスケーリング、(3)レーザーアブレーションICP質量分析計(LA-ICP-MS)によるバルク組成分析の予備実験を行なった。 23個ユークライト隕石を対象に詳細な岩石学的記載を行なった。本研究で観察したサンプル全てに熱変成作用、衝撃変成作用の痕跡を見出した。特にJuvinasユークライトは、2回の衝撃イベント、3回の熱変成イベントを経験していることを明らかにした。これは、小惑星ベスタの局所的な場所において、複数回の衝撃イベントと熱変成イベントが起こったことを示し、これまで考えられているよりも複雑な地殻形史の存在を示唆した。これら事実は、 DAWN探査機(NASA)によって観察されているベスタの地形的特徴と一致する。 衝撃変成作用によって生じたユークライト隕石を構成する鉱物内の歪みやガラス化の影響をx線回折法により実測し、定量的に衝撃変成強度の推定を行なった。反射X線の平均半値幅とユークライト隕石の衝撃変成強度に正の相関があることを発見した。この結果からユークライト隕石の定量的な衝撃変成強度の推定が可能となった。ユークライト隕石の衝撃変成強度は、それら隕石が母天体上(衝撃クレーター内)のどこに位置していたかの指標となる、母岩推定に有効な手法である。 統計分析に用いるユークライト隕石のバルク組成データ取得のため、LA-ICP-MSで隕石サンプルの試験的な測定を行なった。正確なバルク組成データを得るための条件出しを行なった。 上記研究成果を複合的に利用することで、定量的かつ多角的にユークライト隕石の形成史を考察可能とする。また統計手法を用いた分類法確立の為、現在は既存のデータベースの値を使い予備実験を行なっている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究は、3年間で100個程度のユークライト隕石の分析・記載・分類を行う予定である。今年3月末までには23個の隕石の分析・記載を終えている。これまで23個の隕石の分析・記載を通じて隕石の分析法・記載方法を取得した。そのため、今後は、分析・記載をこれまで以上に迅速に行うことができる。またLA-ICP-MSによるバルク組成分析法も取得し、今年度からシステマティックな分析を行いデータを出すことが可能となった。 また岩石学的データの統計解析を行うシステムを導入し、既存のデータベースの値を使い予備実験を行なった。予備実験では、ユークライト隕石のグループ分けにクラスター分析や主成分分析が有効であることを確認できた。我々が現在作成中のデータベースは、従来のものよりも項目が多く情報量が多くなる。上記多変量解析は、本研究結果の分析にも有効である可能性が高い。 X線データによる衝撃変成強度の定量化をおこなった。これは、当初の計画には無かった手法であるが、本研究を遂行する上で必要であることがわかったので行なった。ユークライト隕石の衝撃変成強度と反射X線の平均半値幅が正の相関を持つことを発見し、衝撃変成度を定量化した。 上記の研究成果は3つの国内学会(日本惑星科学会など)および国際学会(LPSC2019)で発表した。したがって、期待どうりに研究が進展したと言える。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究は、3年間で100個程度のユークライト隕石の分析・記載・分類を行う予定である。今年3月末までには23個の隕石の分析・記載を終えている。これまで23個の隕石の分析・記載を通じて隕石の分析法・記載方法を取得した。そのため、今後は、分析・記載をこれまで以上に迅速に行うことができる。今年度は、50個程度の隕石を分析予定である。 既存のデータベースの値を使って統計的分類の予備実験をすでに行なっており、いくつかのグループに分けられることがわかっている。これら統計的分類作業を自身の研究結果も加えて行う。現在では、クラスター分析と主成分分析が有効な手段であることがわかった。しかしながら、他の統計手法も適用する余地があるためさまざまな手法を用いてそれぞれ解析法の特性を考察する。また、隕石のバルク組成から多変量解析を行い分類を行なっているが、その他分類に有効であると考えられる要素を逐次追加して行く予定である。次元圧縮や標準化などの操作を行い分類に有効な要素の考察を行う。 X線回折データを用いたユークライト隕石の衝撃変成度の定量化をこれまでに行なっているが、衝撃回収実験サンプルとの比較により圧力計としての応用が見込まれている。衝撃回収実験を行なったサンプルは、すでに提供を受けており、これらサンプルの解析も並行して進める。
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Research Products
(5 results)