2019 Fiscal Year Annual Research Report
ユークライト隕石の母岩推定-統計手法からのアプローチ-
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18J20563
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Research Institution | The Graduate University for Advanced Studies |
Principal Investigator |
金丸 礼 総合研究大学院大学, 複合科学研究科, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2018-04-25 – 2021-03-31
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Keywords | ユークライト隕石 / 小惑星ベスタ |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は、主にユークライト隕石の衝撃変成作用のスケーリング(1)・岩石学的タイプ(熱変成度)の再検討(2)を行った。ユークライト隕石の統計手法を用いた分類のためには、各ユークライトの形成・変成史の理解が必要である。本研究は、当初予定していなかったが、ほとんどのユークライト隕石が熱変成作用・衝撃変成作用を経験しているという事実から本研究課題を達成する上で重要であり優先的に進めてきた。ユークライト隕石の岩石学的タイプ(熱変成作用)は、主に輝石の鉱物学的特徴によって定義されておりユークライトが母天体表層でマグマから固化した後の冷却速度と関連づけられている(Takeda and Graham 1991)。しかしながら、ユークライトの中には新たなマグマとの接触や衝撃イベントなどにより二次的に加熱されたサンプルの存在が示唆され、その関係は複雑である。衝撃変成作用は、隕石を角礫化・溶融させ隕石が始原的に持っていた情報を様々な程度で攪乱している。さらに、衝撃変成作用は、熱変成作用やメタソマティズムを引き起こす原因とも考えられており、その理解は重要である。 これら変成度は、統計学的な分類の指標とするため、定量的に解析を行った。衝撃変成度は、X線回折法で鉱物の歪みを検出し新たな指標とした。熱変成度は、シリカ鉱物、斜長石、輝石などの鉱物の詳細な熱史の比較を行い、マグマからの冷却速度を推定するとともに、二次的な加熱イベントの影響を推定した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
隕石の統計学的な隕石分類のためには、詳細な岩石学的データが必須である。本年度は、16隕石サンプルを岩石学的な手法(光学顕微鏡、電子顕微鏡、電子プローブマイクロアナライザー、顕微Raman分光装置、カソードルミネッセンス分析、X線回折実験)を用いて解析を行った。本年度では、統計学的な隕石分類のための重要な指標である、従来の熱変成度、衝撃変成度の再検討を行い、定量的な指標として改定した。本研究では、カソードルミネッセンスやX線回折などを適用したことは、ユニークな試みである。本研究成果を用いることで今後の統計学的な隕石の分類が可能となり、研究計画を遂行することができる。岩石学的な隕石の解析は、今年度で終了したため、今後は、統計解析を進めていく予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度までの研究により、岩石学的なデータ(衝撃変成度、熱変成度)は、解析済みである。今後の研究は、過去の隕石の岩石学データをコンパイルし、データセットを完成させるとともに、統計学的な解析を進める。予備実験により、ユークライト隕石の全岩組成のクラスター分析、主成分分析から、玄武岩ユークライトと集積岩ユークライトを大別できるという結果が得られている。これら化学的データに岩石学的な解析結果を入れ、解析することで従来よりも詳細に分類が可能であると考えられる。また、本研究では、統計学的分類結果の評価のため、ポリミクト角礫岩の観察を行う。ポリミクト角礫岩は、隕石中に複数の異なる種類の岩片を含んでる隕石である。これら隕石は、母天体上の比較的近いところで形成されたと推定される。 そのため、ポリミクト角礫岩中の岩片の種類と頻度は、統計学的な分類結果と構造的な関係が存在することが予想される。これら、結果の比較を行うことで分類結果の評価を行っていく。
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Research Products
(5 results)