2019 Fiscal Year Annual Research Report
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18J20572
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
吉成 祐人 筑波大学, 生命環境科学研究科, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2018-04-25 – 2021-03-31
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Keywords | 交尾 / 生殖幹細胞 / ショウジョウバエ / 神経系による幹細胞制御 / オクトパミン |
Outline of Annual Research Achievements |
生殖幹細胞(germline stem cell : GSC)は卵へと分化する能力を有する幹細胞である。以前、私の所属する研究室において、交尾によってメスショウジョウバエの持つGSC数が増加することが報告された。しかし、交尾依存的なGSC増殖がどのような経路を介して達成されるのか、未解明な部分が多い。そこで私は、メスショウジョウバエを用いて、交尾後にGSCが増殖するメカニズムの解明を目的として本研究を行っている。 昨年の報告時には、メスショウジョウバエの卵巣へと投射するオクトパミン産生神経が交尾依存的なGSC増殖をコントロールしていることを明らかにしていた。 そして、私は採用第2年目には、「卵巣へと投射するオクトパミン産生神経に発現する神経伝達物質受容体の不活性化が交尾後のGSC増殖、または卵巣へと投射する神経の活性にどのような影響を与えるかを解析する」ことを計画していた。その結果、卵巣へと投射する神経において発現する神経伝達物質受容体、ニコチン性アセチルコリン受容体がその神経の活性に重要であることを見出した。さらに、卵巣へと投射する神経は、子宮から中枢神経系へと投射する交尾刺激受容コリン作動性神経と直接連絡しており、アセチルコリンーニコチン性アセチルコリン受容体のシグナル伝達を介して活性が調節されることを明らかにした。この発見により、2016年の報告以来未解明であった、交尾刺激がどのようにして卵巣へと伝達されるかという疑問が解明された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
私は採用第2年目には、「卵巣へと投射するオクトパミン産生神経に発現する神経伝達物質受容体の不活性化が交尾後のGSC増殖、または卵巣へと投射する神経の活性にどのような影響を与えるかを解析する」ことを計画していた。その結果、卵巣へと投射する神経において発現する神経伝達物質受容体の機能解析だけにとどまらず、その神経と連絡する上流の神経を特定した。 また、私は交尾依存的なGSCの増殖を引き起こすために、卵巣内で神経からの入力を受け取る神経伝達物質受容体(オクトパミン受容体)を特定し、その受容体から起こるシグナリングがGSCの増殖を制御することを発見した。さらに、その受容体のシグナリングの下流では細胞外マトリックスの調節因子であるMatrix Metaroprotease2 がGSCの増殖を引き起こすために必須であることを明らかにした。これらの発見により、「交尾から始まる中枢神経系を介したシグナリングがGSCニッチの細胞外マトリックスを調節することによって、GSCの増殖を引き起こす」という一連の情報伝達経路が明らかになった。 この結果は、「神経系依存的な幹細胞の動態制御の詳細を明らかにした」という点で当初の研究計画以上の進展を見せたものだと考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究課題の結果を報告すべく、本年度は論文の投稿を計画している。現在、上記の成果をまとめた論文の執筆も完了し、プレプリントサーバーbioRxivにて公開した。本論文自体は現在査読中である。査読が終了次第、追加実験を行い、再投稿する予定である。
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Research Products
(4 results)