2018 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
18J20574
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Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
小池 開 慶應義塾大学, 理工学研究科, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2018-04-25 – 2021-03-31
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Keywords | 流体構造連成問題 / 希薄気体 / Boltzmann方程式 / 圧縮性Navier-Stokes方程式 / 流体力学 / 長時間挙動 / Green関数の各点評価 / 数学解析 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は,希薄気体中を運動する物体のダイナミクスを理解することである.
【研究実績 1:特殊Lorentz気体中の剛体運動】希薄気体中を運動する物体のダイナミクスに関して,これまでは自由分子流とよばれる非常に希薄な気体中を剛体が運動する場合にしか,数学的な成果は知られていなかった.自由分子流においては,気体分子同士の衝突は一切考慮されない.1つ目の成果は,これにある種の相互作用を加えた特殊Lorentz気体とよばれるモデルに対して,先行研究の結果を拡張したことである.このモデルは Tsuji, Aoki (2012) で数値計算による解析がなされており,長時間挙動に関するいくつかの興味深い現象が報告されていた.本研究によって,これらの現象の数理的な構造が明らかになり,数学的に厳密な解析ができるようになった.本研究成果は学術雑誌 J. Stat. Phys. において報告した.
【研究業績 2:1次元圧縮性粘性流体中の質点運動】研究実績 1 で扱ったモデルは簡易的なものあり,将来的には Boltzmann方程式で記述される,より現実的な気体を扱う必要がある.Boltzmann方程式のモデル方程式である BGKモデルについては,空間1次元の場合に Tsuji, Aoki (2013, 2014) で数値計算による解析がなされている.2つ目の成果は,Boltzmann方程式と流体力学極限を通して密接に関係する圧縮性Navier-Stokes方程式の場合に,彼らの数値計算結果と定性的に一致する数学的な結果を得たことである.また,彼らの数値計算では注目されていなかった,流体諸量の長時間挙動も解明することができた.証明に用いた手法(Green関数の各点評価)は,これまで流体構造連成問題の解析に用いられたことはなく,関連分野の進展に大きく寄与する新規性の高い成果であると考えている.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究実績の概要で述べた成果は本研究課題の進展にとって重要な成果であり,研究は順調に進展していると判断する.
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Strategy for Future Research Activity |
今後は Boltzmann方程式で記述される気体に対して,これまでの成果を拡張することを目指したい.研究実績の概要で述べた Green関数の各点評価による方法は,Boltzmann方程式の場合にも有用であると考えている.ただし,Boltzmann方程式の境界条件が複雑であるため,圧縮性Navier-Stokes方程式の場合の簡単な拡張という訳にはいかない.今後の研究では,このような難点を取り除く方法を模索するつもりである.
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Research Products
(9 results)