2018 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
18J20590
|
Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
松坂 俊輝 九州大学, 数理学府, 特別研究員(DC1)
|
Project Period (FY) |
2018-04-25 – 2021-03-31
|
Keywords | モックモジュラー形式 / 多重調和マース形式 / j函数 / 実二次体 / 双曲型アイゼンシュタイン級数 |
Outline of Annual Research Achievements |
DukeらはDirichlet L函数のs=1での特殊値の判別式に関する母函数を考えることで,モックモジュラー形式の拡張の一例を与えている.本研究ではLagarias-Rhoadesの仕事を踏まえることで,より一般に多重調和弱マース形式という非常に大きな函数のクラスを導入し,それらのなす空間の基底を具体的に決定,かつ基底の間に存在する,ある微分作用素による対応関係も明示的に記述した.これにより,Ono,Jeon-Kang-Kimらによって知られているモックモジュラー形式,およびその一般化の様々な例は,統一的に理解できるようになった. さて,本研究の目的の一つに「楕円モジュラーj函数の実二次点での「値」について理解する」を掲げていた.この値についてDukeらはまた,その適切な平均値を考えることで,その母函数がモックモジュラー形式になることを示している.これはZagierによるj函数のCM値に関する結果の実二次類似であるのだが,本研究ではj函数に限らず,一般の多重調和弱マース形式に対して,そのCM値や実二次点での値の適切な母函数が,半整数重さの保型性を持つことを明らかにした.これは従来の結果を大きく一般化するものであり,特にKroneckerの極限公式に適用することで,古典的に知られる等式の拡張・別証明を与えることができた. その他にも,Schwagenscheidtと共同で双曲型アイゼンシュタイン級数の極限公式を与えることに成功した.これは古典的な放物型アイゼンシュタイン級数に対応する類似物になっており,その極限公式の中にj函数の実二次点での値が現れることを確認した.一方で,この結果から得られる函数の一部を用いることで,ある絡み目の絡み数を計算できることが知られている.一見して異なる理論において共通する対象が現れており,これは本課題に何らかの示唆を与えるように思われる.
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
当初はモックモジュラー形式に関するDukeらの一連の研究を理解することを本年度の研究目標として掲げていたが,予想を大きく超えて,一般の多重調和弱マース形式に対して彼らの仕事を一般化することができた.また4月から10月までドイツのCologne大学に滞在していた際,Bringmann,Schwagenscheidtをはじめ,多くの研究者との議論を通して,双曲型アイゼンシュタイン級数などの新たな視点,モックモジュラー形式,テータリフトなどの専門的な技術を得ることができた.
|
Strategy for Future Research Activity |
今回新たに得られた多重調和弱マース形式や双曲型アイゼンシュタイン級数の理論をさらに推し進めることによって,引き続きj函数の実二次点での値の意味付けについて考察を行う.具体的には,j函数のCM値に関する私自身の以前の仕事にならい,この値についても何かしらの関係式を得られないか,また古典的な放物型アイゼンシュタイン級数の理論にならい,本年度に得られた双曲型アイゼンシュタイン級数の結果から,この値に関する情報が得られないか,理解を深めることを目標とする. さらに昨年,スイスのBengoechea-Imamogluによって,この値に関する金子の観察・予想群について,その定式化および証明が部分的に与えられている.スイスを再度訪ね,彼女らと直接会って議論をすることで,この方向からも研究を推進したい.
|
Research Products
(16 results)