2019 Fiscal Year Annual Research Report
MHD効果を利用した超高熱負荷環境に対応可能なダイバータシステムへの挑戦
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18J20648
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
川本 誠 東北大学, 工学研究科, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2018-04-25 – 2021-03-31
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Keywords | 電磁流体力学 / ダイバータ / 液体金属 |
Outline of Annual Research Achievements |
今年度はまず、昨年度に実施した数値計算のうち、検討が不十分であった項目について、再度計算を実施した。解析体系は昨年度と同様に、平行一様磁場下の液体金属流れ中に当該研究で提案する部分絶縁フィンを導入したモデルである。しかしながら、以前のモデルではフィンによって生じる3次元的な誘導電流を正確に捉えられていないことが明らかとなった。そのため、モデルに大きな助走区間と後流区間を加え、この問題の解決を図った。結果として、以前のモデルを用いた場合との計算結果の差異は大きいものではなかったが、より正確に実現象を追従するモデルを構築した。このモデルを使用して、再度、フィンを導入しない場合、金属製フィンを導入した場合、部分絶縁フィンを導入した場合の3ケースについて、解析を実施した。まず、部分絶縁フィンの導入による表面の圧力分布を比較した。結果より、部分絶縁フィンの導入による上流部の圧力上昇が確認されたが、表面変形は37μmほどと、極めて小さいことが示唆された。次に、各種フィンの導入による、自由表面の最高温度を比較した。いずれのフィンにおいても、表面の最高温度低減が確認されたが、その大きさはフィンのない場合に比べて1%未満と小であった。また、金属製フィンと部分絶縁フィンの間には、顕著な差異は認められなかった。これらの結果を踏まえて、当該概念の導入による温度低減を実現するためには、複数の部分絶縁フィンの導入や構造の撹拌への最適化を実施する必要性があると考えられる。これらの結果は” Heat transfer enhancement in MHD free surface flow by controlling the electromagnetic force with fin structure”と題してFusion Engineering and Design誌146号に掲載されている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
現在、本研究は数値シミュレーションによる基礎検討より、磁場環境下での液体金属流動実験へとフェーズを移しており、現在までに新しい実験装置の設計、製作およびテストランまでが完了している。研究の状況については、概ね申請時の計画通りに進行しており、その進捗は良好であるといえる。実験装置の設計においては、具体的に、数値計算による予備解析、アクリル製試験部の設計、送液ポンプの選定、流路の損失計算、供給タンク設計および作動流体の選定などを実施した。装置の製作については2020年4月現在、概ね完了しており、現在はテストランを行いながら、詳細検討と改良を実施している。本試験装置は東北大学金属材料研究所附属強磁場超伝導材料研究センターの所有する、横向きに磁場を印加することが可能な超伝導マグネットに組み付けられており、長手600mm、幅60mmの試験部に最大1.7 Tの非一様磁場を印加することが可能である。ストレージタンクより、送液ポンプによって組み上げられた液体金属は、上部の供給タンクに送られ、バルブの開閉によって試験部に導入される。試験部に流入した液体金属は液溜まり部より整流器をへて、磁場の印加されている試験部を通過し、ストレージタンクに回収されるループとなっている。試験部には金属製プローブ格子を鉛直方向に稼働させる機構が取り付けられており、流動により生じた電位の分布を取得する。この電位分布はLiquid-metal electromagnetic velocity instrument 法を用いて速度場に変換され、これを評価することが可能である。次年度は当該試験装置に、本研究で提案する部分絶縁フィンを導入し、MHD自由表面流動への寄与をこの手法を用いて評価する予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究の主たる目的は、核融合炉のような強磁場環境下の液体金属自由表面流れに適用可能な撹拌機構の考案と、その検討である。現在までに新たな機構である部分絶縁フィンの提案と原理実証、数値解析による調査が実施された。この目的を達成するための研究推進方策としては、以下の事項が挙げられる。 1. 流動実験と数値シミュレーションの相互参照 これまでの検討には主として数値シミュレーションを用いていたが、実験装置が完成する次年度は流動試験からも、当該概念による液体金属流動場への影響が明らかとなる。これらの知見を数値シミュレーションモデルに導入することによって、より現実性の高いモデルを構築することが可能となることに加えて、モデルの妥当性を担保することが可能となる。また、自由表面の変形など、計算リソースの都合上、評価が難しかった項目についても、実現象を観察することによって比較的容易にかつ定量的に評価を行うことができると考えられる。また、数値シミュレーションから得られた知見を実験にフィードバックすることも可能である。具体的には、数値シミュレーションによる部分絶縁フィンの形状パラメータの絞り込みや、プローブ設置箇所の検討などが挙げられる。 2. 直行配列実験法の導入 流動実験の実施に際しては、非常に多くのパラメータが存在する。例として、駅膜厚さや液体金属のバルク流速など流動に関するパラメータ、フィンの厚さや高さなどの形状パラメータなどが挙げられる。これらの全てをパラメータとして実験を行うのは現実的ではなく、何らかの手法を用いてパラメータを絞りこむ必要がある。そのため、今後の流動実験では直行配列実験法の導入を検討している。この手法を用いることで、当該概念の流動撹拌への最適化へ、より少ない試行回数でのアプローチが可能になると考えられる。
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