2018 Fiscal Year Annual Research Report
複雑流体における熱交換メカニズムの分子論的解明および高効率熱輸送媒体の設計開発
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18J20653
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Research Institution | Kindai University |
Principal Investigator |
小林 祐生 近畿大学, 総合理工学研究科, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2018-04-25 – 2021-03-31
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Keywords | ナノ流体 / 自己集合 / 分子シミュレーション |
Outline of Annual Research Achievements |
2018年度は,プログラムの拡張,計算モデルおよびパラメータの妥当性の確認を行った.粘度の計算に関しては,これまでの研究において開発済みであった仮想的密度勾配法を用いたプログラムを利用した.具体的には,添加剤として界面活性剤を選択し,管内流れを与えた.まず速度分布,流量,圧力分布を算出し観察したところ,安定した管内流れが再現できていることを確認した.その後,管内の流速,管内壁の化学的な相互作用,界面活性剤濃度を検討パラメータとして変化させたところ,過去の実験と同様の傾向を得ることができた.また,界面活性剤の自己集合構造と粘度の関係性を調査し,ある程度の粘度が制御できることを示した.これらの結果は,投稿論文としてすでに発表されている. 熱伝導率の計算に関しては,ナノ粒子分散系を検討した.平衡状態のシミュレーションを行い,Green-Kubo法を用いて熱伝導率の算出を試みた.熱伝導率のナノ粒子体積分率依存性を確認したところ,実験での結果と同様に濃度が増加するとともに,熱伝導率の増加も観察された.その後,ナノ粒子表面の化学的性質に着目し,熱伝導率とナノ粒子が形成する自己集合構造の関係を調べた.具体的には,疎水性ナノ粒子,親水性ナノ粒子,Janus(疎水面,親水面を伏せ持つ)ナノ粒子を用意し,それぞれのナノ流体に関する熱伝導率の濃度依存性を調べた.その結果,熱伝導率はナノ粒子が形成するクラスターサイズに依存することが分かり,ある程度の熱伝導率が制御できることを示した.これらの結果は,投稿論文として現在投稿中である.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
当初予定していたプログラム開発・拡張とシミュレーションモデルの作成は順調に進めることができている.さらにそれらの妥当性もおおよそ完了している.ナノ流体の粘度に関しては,界面活性剤を添加剤として選択し,界面活性剤の自己集合構造と粘度の関係性に関する投稿論文を出版することができている.一方,熱伝導率に関しては,ナノ粒子表面の化学的性質をパラメータとし,ナノ粒子が形成する自己集合構造と熱伝導率の関係性を調べた.熱伝導率に関する結果は,投稿論文として現在投稿中である.このようにプログラムの拡張,計算モデルおよびパラメータの妥当性の確認にとどまらず,本課題の目的である「ナノ流体における熱交換に関する分子論的なメカニズムの解明」につながる結果が一部出始めているため,当初の計画以上の進展があったとした.
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Strategy for Future Research Activity |
再現したシミュレーションをもとに,ナノ流体における熱交換の分子論的なメカニズムを解明する.粘度については,本年度ではナノ粒子分散系を検討する.流動下におけるナノ粒子の扱い方や,実際の系に近づけるためにより大きな計算系を用意するために,プログラムコードの開発を行う.検討パラメータは,ナノ粒子表面の化学的性質,ナノ粒子体積分率,溶媒の疎水性等,流速等を考えている. 熱伝導率については,前年度に作成したプログラムを元により多くの検討パラメータを振り,どの因子が熱伝導率の挙動に影響するのかを明らかにする.また非平衡シミュレーションにも取り組む予定である.
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