2019 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
18J20694
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Research Institution | Chiba University |
Principal Investigator |
安江 里紗 千葉大学, 融合理工学府, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2018-04-25 – 2021-03-31
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Keywords | フェロセン / 面性不斉 / NHC / Ir錯体 / 金属錯体触媒 / 不斉水素移動反応 |
Outline of Annual Research Achievements |
不斉触媒の開発研究は、選択性に過度の注意が向けられていたステージから、触媒回転数にも特別な注意が向けられるステージへと移り変わりつつある。そのため、金属に強く配位可能であるN-ヘテロサイクリックカルベン(NHC)は近年注目を集めている。一方、不斉配位子という枠組みで捉えると、NHC 配位子の開発は発展途上である。立体的なコーン状構造をもつホスフィン配位子と比べ、平面的なフェンス状構造をもつ NHC 配位子の不斉環境をデザインすることはそもそも難しいとされている。 本研究の目的は、不斉環境の構築に不利とされるNHCの平面性を逆手に捉えた「面性不斉メタロセン縮環NHCの開発」というアイデアに基づき、選択性と触媒活性を両立できる画期的な触媒を生み出すことである。 私はこれまでに、配位力の向上と不斉環境をより魅力的にする目的でシクロペンタジエニル(Cp)基をペンタメチルシクロペンタジエニル(Cp*)基へと置き換えた環状アミノフェロセニルカルベン配位子の開発を行った。このものが配位したIr錯体のTolman electronic parameter (TEP)を求めたところ、プロトタイプであるCAFeCはもちろん、強い配位力を持つ環状アミノアルキルカルベン(CAAC)よりも強い配位力を持つことが明らかになった。本研究では、開発したCAFeCの不斉配位子としての機能を評価すべく、環状スルホニルイミンのIr触媒不斉水素移動反応における検討を行った。結果、ホスフィン配位子を添加して得られたNHC-ホスフィン型の錯体を用いた際に、優れた選択性で目的物が与えられることが明らかになった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
本研究では、開発したCAFeCの不斉配位子としての機能を調査すべく、環状スルホニルイミンの不斉水素移動反応における評価を実施した。CrabtreeやMetallinosらによる報告に刺激を受け、触媒前駆体の基本構造には、活性が高いことで知られるIr(I) NHC-ホスフィン錯体を選択した。まずは、ホスフィン配位子を持たない触媒に関してであるが、この触媒は、やはり活性が低く、収率及びエナンチオ選択性に関して、共に不満足な結果を与えた。一方、やはりトリフェニルホスフィンを有するNHC-ホスフィン型の触媒は、はるかに高い活性を示し、57%収率、50% eeで目的物を与えた。続いて、ホスフィン配位子のスクリーニングを行った。トリフェニルホスフィンをトリパラトリルホスフィンに変更したところ、本検討におけるベストの選択性(65% ee)で目的物が得られた。最後に、今回導入したCAFeC上のCp*基の効果を確かめるべく、Cp基を持つIr錯体で同反応を行った。その結果、やはり嵩の小さなCp基を有する触媒は、Cp*基を持つ触媒よりも劣ったエナンチオ選択性で生成物を与えることが分かった。 本結果は、これまでに開発したCp*基を有するCAFeCが金属に強く配位するだけでなく、不斉配位子として有用であることを示している。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度、開発したCp*CAFeC配位子が環状スルホニルイミンの不斉水素移動反応において不斉配位子として機能することを明らかにした。しかし、立体面に関しては、金属中心近傍ではほとんど変化がないという結果を得ている。今後は、さらに不斉環境を魅力的にする目的でCp基をより嵩高くした配位子の検討を行うだけでなく、C2対称型のビスカルベン金属錯体及びピンサータイプのビスカルベン錯体の合成を行う予定である。
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Research Products
(6 results)