2018 Fiscal Year Annual Research Report
アナモックス細菌の窒素・酸素同位体分別の解析:海洋窒素循環への寄与の推定
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18J20742
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
小林 香苗 北海道大学, 大学院工学院, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2018-04-25 – 2021-03-31
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Keywords | アナモックス細菌 / 安定同位体比 / 窒素同位体分別 / 酸素同位体分別 / 窒素循環 |
Outline of Annual Research Achievements |
嫌気性アンモニア酸化細菌(以下アナモックス細菌)は、環境中 、特に海洋の無酸素域で、 窒素除去に大きく寄与していると言われている。環境中の安定同位体比を用いて窒素収支を明らかにするために不可欠な同位体分別が、アナモックス細菌に関しては淡水性の1種の窒素同位体分別が唯一報告されているだけで、酸素同位体分別に関しては全く解析されていない。そこで、本研究ではアナモックス細菌の窒素・酸素同位体分別を求める。平成30年度の研究実績としては、3種類のアナモックス細菌(海洋性の “Ca.Scalindua japonica”,淡水性の“Ca. Brocadia sinica”および“Ca. Jettenia caeni”)を、膜分離型連続培養リアクター(MBR)を用いて高度に集積培養し、NH4+→N2, NO2-→N2, NO2-→NO3-の反応の窒素同位体分別(15ε)、および未だに世界で報告例のないNO2-→NO3-の見かけの酸素同位体分別(18E:亜硝酸酸化の酸素同位体分別、および水の取り込みの酸素同位体分別の和)を求めた。それらの研究成果を、7月に沖縄において開催された国際会議10th Asian Symposium on Microbial Ecology (ASME)および、8月にドイツのライプツィヒで行われた国際会議17th International Symposium on Microbial Ecology (ISME17)において発表し、高い評価を得た。学会で得たコメント等も参考に、結果を論文にまとめThe ISME Journalに論文を投稿した。査読者からのコメントを得て、再修正し再投稿した。さらに、窒素同位体分別を求めるよりもさらに複雑な、個々の酸素同位体分別(18ε)を求めるための回分実験も実施した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
申請時に計画していた、連続培養系での3種のアナモックス細菌の窒素同位体分別と見かけの酸素同位体分別(18E:亜硝酸酸化の酸素同位体分別、および水の取り込みの酸素同位体分別の和)を求めることができ、結果をまとめて学会や論文等で発表できている。さらに、より詳しく酸素同位体分別を求める回分実験も予定通り進められているため、順調に進展していると認識している。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度の研究計画としては、第二の目的であるより複雑な酸素同位体分別を求めるために行った、重水(18Oでラベルされた水)を用いて水の酸素安定同位体比を変化させた回分培養実験サンプルの測定を行い、その結果から酸素同位体分別を求める。複雑な酸素同位体分別を求めるモデルの構築も並行して行う。
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