2019 Fiscal Year Annual Research Report
哺乳類の眼における光応答性季節変動の分子機構の解明
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18J20765
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
沖村 光祐 名古屋大学, 生命農学研究科, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2018-04-25 – 2021-03-31
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Keywords | 季節生物学 / 網膜 / 光応答性 / 網膜電位図 / ドーパミン / tyrosine hydroxylase |
Outline of Annual Research Achievements |
採用1年度目に実施した網膜電位図(ERG)の記録実験の結果から、短日低温条件下で飼育したマウスの光応答性は長日温暖条件下に比べて減弱することが示された。また、マウスの眼のRNA-seq解析より、光応答性の季節変化を制御するいくつかの候補遺伝子を選抜した。採用2年度目は、RNA-seq解析の結果を精査しマウスの光応答性の分子機構の解明を進めることとした。 長日温暖条件と短日低温条件で飼育したマウスの眼を用いたRNA-seq解析の結果、35個の遺発現変動遺伝子を同定した。そのうち、ドーパミンの産生に関わるTh遺伝子の発現量が短日低温条件の眼において減少していることが分かった。過去の研究から、眼におけるTh遺伝子の欠損はドーパミン量の減少を誘導し、光応答性を低下させることが示唆されている。そこで、季節変動が示されたTh遺伝子に着目した。 さらなる遺伝子発現解析の結果、Th遺伝子の発現量は温度ではなく日長に制御されていることが示された。また、ERGの記録から、眼の光応答性の季節変化もTh遺伝子の発現量と同様に温度では無く日長によって制御されていることが明らかとなった。さらに、薬理学的な検討から、短日条件下で飼育したマウスの眼の光応答性の低下はドーパミン量の低下が起因していることが示唆された。以上の結果から、マウスにおいて短日刺激で誘導されるTh遺伝子の発現量の低下によるドーパミン量の減少が光応答性の減弱の原因の一つだと考えられる。ヒトの季節性気分障害患者の眼においても、夏に比べて冬にはTh遺伝子の発現量が減少していることが推測される。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
RNA-seq解析から目的の候補遺伝子を同定することができ、おおむね順調に進んでいる
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Strategy for Future Research Activity |
現在、短日条件下における光応答性の低下を回復させるための薬剤の探索を進めている。Th遺伝子の転写機構に着目した薬理学的な検討により、冬の光応答性の低下を回復させることができる候補化合物を選抜する。
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[Journal Article] Seasonal regulation of the lncRNA LDAIR modulates self-protective behaviors during the breeding season2019
Author(s)
omoya Nakayama*, Tsuyoshi Shimmura*, Ai Shinomiya, Kousuke Okimura, Yusuke Takehana, Yuko Furukawa, Takayuki Shimo, Takumi Senga, Mana Nakatsukasa, Toshiya Nishimura, Minoru Tanaka, Kataaki Okubo, Yasuhiro Kamei, Kiyoshi Naruse, Takashi Yoshimura
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Journal Title
Nature Ecology & Evolution
Volume: 3
Pages: 845-852
DOI
Peer Reviewed / Open Access
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