2019 Fiscal Year Annual Research Report
含フッ素光学活性有機ホウ素化合物の新規合成法の開発
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18J20858
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
秋山 颯太 北海道大学, 大学院総合化学院, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2018-04-25 – 2021-03-31
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Keywords | 銅(I)触媒 / ホウ素化合物 / フッ素化合物 / 不斉反応 |
Outline of Annual Research Achievements |
フッ素基の化合物への導入は、分子の脂溶性の向上や分子が代謝されにくくなるといった多くのメリットをもたらす。そのため多数の農薬や医薬品に含フッ素化合物が用いられており、これら化合物の合成につながる有用な含フッ素反応剤が開発されてきた。ここで申請者はそのような含フッ素反応剤として、含フッ素ホウ素化合物に着目した。この化合物はホウ素基を利用した変換反応により、有用な生理活性を持つ多様な含フッ素化合物を与えると期待される。 本年度の研究においてはまず、有機銅(I)化学種によるβフッ素脱離を鍵反応として、光学活性γ-モノフルオロアリルホウ素化合物の不斉合成法を開発した。具体的には、アリルジフルオリドに対して銅(I)/(R,R)-BenzP*錯体触媒存在下、ジボロンを用いることによるβフッ素脱離を伴う不斉ホウ素化反応を行うことにより、光学活性γ-モノフルオロアリルホウ素化合物が高収率、高Z/E選択的、および高エナンチオ選択的に得られることを見出した(Akiyama, S.; Hoveyda, A. H.; Ito, H. et al. Angew. Chem., Int. Ed. 2019, 58, 11998.)。この研究の特色としては、得られた化合物を用いた種々変換反応により、生物学的等価体として有用な光学活性モノフルオロ化合物が得られた点にある。例えばホウ素基の酸化やアミノ化により、アミド等価体として知られるモノフルオロアルケンが得られた。さらに、求電子剤との立体特異的アリル化反応を行うことにより、従来法では合成が困難な、4級不斉中心上にフッ素基を有するモノフルオロ化合物が得られた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
本研究課題について当初の計画以上に進展していると考える理由は、コンスタントに計画通りの内容について論文を出版することに加えて、その他の内容についても論文出版を行うことができているからである。私は研究計画に記したように、銅(I)触媒によるβフッ素脱離を伴うアリルトリフルオリドの不斉ホウ素化反応の開発(Angew. Chem., Int. Ed. 2018, 57, 7196.)をさらに発展させ、種々ジフルオロ化合物に対するβフッ素脱離を伴う不斉ホウ素化反応の開発に成功した(Angew. Chem., Int. Ed. 2019, 58, 11998.)。さらにこの内容については論文出版社側から高く評価を受けることもでき、カバーアートの掲載にもつながっている。加えて本年度は、銅(I)触媒によるβフッ素脱離を用いることによって、含ホウ素ジフルオロジエンの合成にも成功した。本反応により得られる含ホウ素ジフルオロジエン化合物は、ホウ素基を利用した種々変換反応により有用なジフルオロ化合物を与える。これら研究内容についても論文作成を行い、有名化学雑誌に論文出版を行うことができた(J. Org. Chem. 2020, 85, 4172.)。このように私は研究計画に記した内容について計画通りに研究を進めることができ、さらにその他の論文出版も行うことができていることから、計画以上に本研究課題を進めることができていると評価できる。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでの研究において私は含フッ素ホウ素化合物を合成する方法として、含フッ素化合物へのホウ素化反応に焦点を当ててきた。しかし、この方法では得られる含フッ素ホウ素化合物が限定的である。また、基質である含フッ素化合物を得るために多段階の合成ステップが必要であり、効率の面で課題があった。 そこで今後の研究の推進方策として、フッ素基を持たない単純化合物からフッ素化と同時にホウ素化反応を行うことにより含フッ素ホウ素化合物が合成できないかと着想した。この反応により基質の合成に多ステップをかけることなく含フッ素ホウ素化合物を得ることができる。具体的には、ボリル銅(I)活性種とハライドの反応により生じたラジカルが、アルケンへの分子間ラジカルリレーを起こすことによる、末端アルケンのアルキルフッ素化ホウ素化反応を開発する。現在の研究状況としては、カチオン性銅(I)錯体触媒存在下、ジボロン、および配位子としてIMes・HCl、添加剤として臭化ブロミドを用いることにより、高収率で目的のβ, β-ジフルオロアルキルホウ素化合物を得ることに成功している(最高81% NMR収率)。今後は決定した最適条件を基にした基質適用範囲の検討、および化合物の変換により、エーテル等価体構造として知られるジフルオロアルキル化合物の合成を行なっていく予定である。加えて反応機構の検証を目的としてたラジカルクロック実験や、計算手法を用いた検証なども行う。
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Research Products
(7 results)